黒澤明『まあだだよ』--漱石門下の内田百閒先生と、彼を慕う門下生との長い交流の歴史を描いた、心暖まる物語。

黒澤明監督の最後の映画作品『まあだだよ』をDVD」でみた。

漱石門下の内田百閒先生と、彼を慕う門下生との長い交流の歴史を描いた、心暖まる物語。子ども時代のかくれんぼで「もういいかい?」との問いかけに、「まあだだよ」とこたえることをもじった題名だ。

 黒澤明監督の最後の83歳の時の最後の作品である。強くて勇敢で恥を重んじるサムライを描き続けてきた黒澤作品のイメージとはまったく違う主人公は、ユーモアに富み、みずからの弱点をさらけだす、そして教え子たちに敬愛される人物だ。みていてほのぼのとした幸せな感情がわいてくる。

まあだだよ [Blu-ray]

まあだだよ [Blu-ray]

 

 あの世へのお迎えの「もういいかい?」に対し、「まあだだよ」とこたえる趣向の誕生日会から始まる。61歳から実に17年も続く、その間の先生と奥様と、そして教え子たちとの交流は胸を打つ。

百閒先生を演じる松村達雄はいい味を出しているし、所ジョージ、黒澤久男、などが若い姿をみせる。17回目の誕生会では、教え子の子どもや孫たちも一緒に祝う。そこで白髪の百閒先生は倒れる前に、「みんな、自分の本当に好きなものを見つけて下さい。見つかったら、その大切なもののために、努力しなさい。きっとそれは、君たちの心のこもった立派な仕事となるでしょう」と孫たちに語りかける。これは黒澤明が最後に到達した仕事観だろう。

現実の内田百閒は、23才で初恋の人・清子と結婚。31才から44才まで法政大学教授。45才から文筆活動に専念し、1971年に82歳で逝去。

------------------

「名言との対話」9月10日。ハナ肇「定年があるような人生はダメなの。定年のない人生てのは素晴らしいの。休んでられないんだもの」

ハナ 肇(ハナ はじめ、1930年2月9日 - 1993年9月10日)は、日本ドラマーコメディアン俳優

1955年に、自らがリーダーでありクレージーキャッツの前身である、「ハナ肇とキューバン・キャッツ」を結成。後に、植木等谷啓らが加わり、1957年に「ハナ肇とクレージーキャッツ」となった。音楽バンドとコントを組み合わせた、このコミックバンドは茶の間の人気者だった。ギターの植木等(無責任男!)1926年生、トロンボーン谷啓1932年生、ベースの犬塚弘1929年生、ピアノの桜井センリ1926年生、テナーサックスの安田伸1932年生など強烈な個性の人気者の集まるメンバーのリーダーとしてグループを率いた。

ドラムスも担当したハナ肇はワンマンであったが、親分肌の人情家だったため、このグループは長く続き、垢抜けた大人の笑いをテレビで堪能したものだ。いかりや長介率いるザ・ドリフターズの名付け親は、ハナ肇だった。

日本テレビ系『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』でハナ肇がヒッピー姿で叫んだ「アッと驚く為五郎」は流行語にもなった。豪放磊落で人情深い性格をそのままキャラクター化した、山田洋次監督「馬鹿まるだし」シリーズが大ヒットし、ブルーリボン主演男優賞・監督賞を獲得し、山田監督の代表作「男はつらいよ」シリーズにつながっていく。

1985年の結成30周年には「アッと驚く!無責任」を企画された。この時の特別番組を見た。「素晴らしき仲間たち」では、それぞれ独自の道を切り拓いたメンバーが思い出を愉快に語っている。それに「スーダラ節」を書いた青島幸男が加わって、みんなで笑い続けていた。ハナ肇は、このメンバーのうち初めに逝ってしまった。
「常に人生の最後の瞬間だと思って生きろ」
「まず好きな人のモノマネから始めろ。モノマネを続けてると、やがてそれはモノマネじゃなくてお前の物になるんだ」
ハナ初めのメッセージは、「今を生きろ。続けろ。休むな」だ。人生に定年はない。