「週刊朝日」(9月11日発売)の「引き際の言葉特集」でコメント。

週刊朝日9月21日号(11日発売)の「引き際の言葉」特集。6ページ。取材を受けた内容が、大きく載っていた。上手にまとめていただいた。

週刊朝日 2018年 9/21 号【表紙: 関ジャニ∞ 】 [雑誌]
 

以下、取材者が書いた「地」の文章から。

・挨拶に慣れた人は、多くの「引き出し」をつくる工夫をしている。『偉人の命日366名言集』など、言葉に関する著書が多い多摩大学久恒啓一副学長。スピーチ当日が命日か誕生日の偉人や著名人を見つけ、名言やその人にまつわる話をしている。

・スピーチ当日にまつわる人の話題に触れるようにしたのは、学部長に就任してあいさつの場が増えてから。入学式、卒業式、保護者会、学生のオリエンテーション、、、。こうした場で魅力的なスピーチをする人が少なかったため、自分はインパクトのあるスピーチをしようと心がけたという。

・スピーチの日はまちまちだから、365日分のネタを用意しているという。毎日、誰かしら著名人の命日か誕生日がある。○月X日は誰に関係がある日かを気をつけており、毎日書くブログで、その日が命日や誕生日の人の人生を弔辞のように記している。

・旅行や出張時は、その地の人物の記念館を訪れる。東京の「美空ひばり記念館」や、大阪の「司馬遼太郎記念館」など、著名人の記念館は全国1千館以上。著作や直筆の手紙があり、人物像が丸ごとうかがえる。すでに850館近く訪れた。

そして、アドバイスなど8回、「 」つきで発言が記されていた。

「心に響く話をするには、、」「聞き手の年齢層も考えます、、」「井伏は、、、」「1972年の自民党総裁選で田中角栄に負けたとき、、、」「時代ごとに広く影響を与えた偉人がいますが、、」「引き際が肝心といわれますが、、、」「定年なんて他人が決めたことで、、、」「三井物産の設立に関わった益田孝は66歳のとき、、、、」。

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午前:研究室で、今後の講演・講義の準備。

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「名言との対話」9月14日。小島直記「自伝信ずべからず、他伝信ずべからず」

 小島 直記(こじま なおき、1919年5月1日 - 2008年9月14日)は、福岡県八女郡福島町(現・八女市福島)の生まれの小説家。経済人などの伝記小説で知られる。

経済調査官をへて1954年ブリヂストンにはいる。一方,、火野葦平の後をうけ「九州文学」を主宰。1965年から文筆に専念し、政財界の人物評伝に新分野をひらいた。

 「伝記」と「評伝」を仕事としている小島は、34歳の時、勤めをやめてペン一本になるが、うまくゆかずに友人の石橋幹一郎を通じて、ブリジストンに入り、石橋正二郎という巨人と遭遇する。そして再度ペン一本で立つ。父の没年と同じ40代半ばの年齢で「父の生きただけは生きた。これからは自分の生きたいように生きるぞ」と決意し、清水の舞台から飛び降りた。

この多作の伝記作家の『福沢山脈』(上下)を読んで、福沢諭吉の偉さと、筆力の高い小島直記に関心をもったことがある。

「人間の幸せとは、金でも地位でもない。天職に就いているという気持ちで、元気に働いている満足感である」

「人生は出会い、必要な出会いは遅くもなく早くもなく到来すると説かれ、人物に学べ、加えて伝記を通じて古今東西の人物に学べ」

「諸君が不正を行えば、枕元に化けて出て叱責する」(松下政経塾にて)

著書では、福沢諭吉、 松永安左ヱ門、鈴木三郎助石橋正二郎小林一三奥村綱雄大久保利通池田成彬鮎川義介、森恪、、、などの伝記・評伝を多く書いている。1990年、第2回安岡正篤賞を受賞。

1983年には「小島伝記文学館・伝記図書館」が静岡県の富士裾野に駿河銀行によって設立されている。小島直記氏からの寄贈図書3,700冊と、内外の伝記・評伝1,000冊を収蔵し公開している。三島から山にあがった風光明媚なところだ。小島がかってここにこもって執筆した部屋、使用した資料も残されている。

 73歳、ガンに冒された小島は『鈴木大拙全集』全33巻を読み始める。心を込めて理解し血肉にしようとつとめることに、自分の「生」があるとの決意だった。その努力が終わるところが人生時刻表の終わるときだ。小島は89歳でみまかっているが、この「行」を終えたのだろうか。

これほどの伝記作家が、「自伝信ずべからず、他伝信ずべからず」と語っているのが面白い。自伝には弱みを隠す虚飾が必ずあり、伝記には実物以上のイメージがついてまわるからだろう。それはそうだが、私は本人が自分の姿がこうあって欲しいという「自伝」に興味があるから、この「名言との対話」でも、なるべく自伝を手に取るようにしている。ウソや誇張があっても構わない。実像よりも、こちらがその人から何を学ぶかの方が大事だと思うからだ。

人間・出会いの研究 (新潮文庫)

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