文庫リレー塾:鼎談「東アジアへの知的三角測量--どう安定させるか」。柯 隆・磯崎敦仁・寺島実郎。

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文庫リレー塾。鼎談「東アジアへの知的三角測量--どう安定させるか」。

東京財団政策研究所主席研究員:中国)・磯崎敦仁(慶応義塾大学准教授・北朝鮮)・寺島。

・6/12の米朝首脳会談以後?

柯 隆:改革開放から40年。今週の安部首相訪中でODA終了。今の中国?2018年3月のトランプ政権は全人代で主席の任期撤廃の憲法改正が許せない。貿易の不均衡に着目し「貿易戦争」へ。中国の官僚が素案を作らない、中国からのレスポンスがない。自動社はマイナス。雇用が問題で外国企業が海外へ逃げると農業もできない労働者が犯罪に走る怖れ。 これからの中国? 3つのワナに直面。中所得国のワナ(1万ドルから2万ドルへは「技術」(知財権)の壁)。タクトゥスのワナ(政府への信用の危機)。ツキディディスのワナ(挑戦すると必ず戦争が起きる)。

磯崎:1.北朝鮮はサミット外交の国・トップの方針転換で変わる。首脳会談が不可欠。金正恩はリスクを取り勝負に出た。実用主義、抜き打ち視察。核を持つデメリットもある。体制維持と高度成長。米朝融和という大きな方向は不可逆。非核化は進むだろう。2.国内に向けてはかなり説明。4月20日、核と経済の併進という恒久路線から、経済集中の高度成長路線へ転換。専軍政治という言葉も使わなくなった。国防委員会を国務委員会に変える。軍服からスーツへ。非核に進む。

柯 隆:中国にとっての北朝鮮? 中国は核ドミノを心配(南、日本、台湾)。中国は南北統一を心配(緩衝地帯がなくなる)。米中関係? 中国はプラットフォームが強い(8億人のユーザー)。5G/チップなど「技術」に弱い。

磯崎:経済制裁は効いているのか? 影響はあるが独裁の北は中枢を守るカネはある。「高度成長を目指す」。物価は安定。ドン底が脱した。 南北湯和の先に反日になるのではないか? その徴候あり。アメリカ批判はなくなった。日本批判が強まっている。反米から反日へ。

柯 隆:アメリカとの関係?中国はトランプ政権に対してどうしていいかわからない。周近平はリークワンユー(終身独裁者)を目指している。「下放」世代の特徴は破壊力はあるが、つくる力はない。どういう中国をつくるのかが、夢がはっきりしない。米欧のバランス戦略。ロシアという変数あり。

磯崎:トランプの苦境(中間選挙の結果・サウジの問題)になると、何か動きもあるかも。

柯 隆:日本人の好きな「共存共栄」は存在しない、通用しない。飲み込まれるか対抗するか。日本は極端。真ん中がない。安定した関係のキープが必要。政治にリードさせると不安定。民間の関係構築を。

磯崎:北は「対外の多角化」と宣言。中国、ロシア、韓国。

柯 隆:民間主導の日中関係。日本は右と左にどうしてこうもぶれるのか・日本には多様性のあるシンクタンクが少なすぎる。分析し、戦略を立てる必要がラある。

磯崎:日本は感情の先走りは危険。希望的観測は国益を損なう。

寺島:東アジアにおける日本の立ち位置? 技術力のある成熟した民主国家。

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始まる前に、赤坂のニューオータニの「マリー・ローランサン美術館」を訪問。

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「名言との対話」10月23日。山本夏彦「表向きは迎合に見せて、実は見る人が見れば分かるように言いたいことを言うように心がけている」

山本 夏彦(やまもと なつひこ、1915年6月15日 - 2002年10月23日)は、日本随筆家編集者

東京下谷根岸生れ。詩人・山本露葉の三男。少年期に渡仏後、1939年24歳のとき「中央公論」に「年を歴た鰐の話」(L.ショボー原作)を発表する。1955年雑誌「室内」を創刊。1984年に菊池寛賞を受賞。1990年に『無想庵物語』で読売文学賞を受賞した。「室内」に「日常茶飯事」、「週刊新潮」に「夏彦の写真コラム」、「文藝春秋」で「愚図の大いそがし」、「諸君!」で「笑わぬでもなし」を連載した。著書に『私の岩波物語』『世間知らずの高枕』『「社交界」たいがい』『寄せては返す波の音』『オーイどこ行くの』『一寸さきはヤミがいい』など。2002年、胃ガンの転移により87歳で逝去。死の直前までコラムを書き続けた。

弟子である安部譲二の『堀の中の懲りない面々』は、山本創刊の『室内』に連載された、獄中の体験談から生まれた本である。うるさ型の保守である藤原正彦阿川弘之山本夏彦のコラムの愛読者だったというのは、本を読むとよくわかる。

以下、『ひとことで言う 山本夏彦箴言集』(新庁舎)から。

この世はやきもちから成っている。人間の知恵は古典に尽きている。人はこの世にニュースがないのに耐えられない。表向きは迎合に見せて、実は見る人が見れば分かるように言いたいことを言うように心がけている。我々は大々的に騒げと指図されると騒ぐ、指図されなければ騒がない。食べられる限り国民は怒らない。記事は給料をもらっている記者が書くから信用できない、広告は一字千金という大金を払う広告主がつくるから分からないことは書かない。私の本は売れるほうなのに店頭で買っている人をついぞ見たことがない。三十年四十年友に似たものならそれは友である。一冊を熟読玩味すれば人間のたいがいは、ここにふくまれていること男女のようである、一人のなかに千人の女ははいっている。風俗の変化は天災地変によることが多い。たいていのことはせ詮じつめると税制に帰する。繰り返せば人は信じる。新聞で読まれないのは小説と社説である。ギリシャ人は税金を納めて一旦緩急あったとき武器をとって国を守る意志と能力のある壮丁にしか選挙権を与えなかった。没書になる原稿を送る特派員はない。新聞の「天声人語」「余録」のたぐいは現代の終身なのである、あれには書いた当人が決して実行しない、またするつもりもない立派なことが書いてある。ニュースも天気予報もローカルがいい。新聞に出なければそれは存在しない。我々は我々以上の国会も議員も持てない。

山本夏彦は、政治とマスコミと世相と人間について、一見世論に迎合しているように見せて、あとで「ははあ」と批判が分かる人には分かるように異端の説を述べる。このテクニックがコラムを書く要諦だというが、世論に迎合せずに本音を吐露しているように私にはみえる。箴言には教訓という意味と戒めという意味があるのだが、山本夏彦箴言コラムは上段に振りかぶった教訓ではなく、控えめな書きぶりの「戒め」的要素が強く苦笑を招来するから読者の心のすき間に入り込むのだろう。

 

ひとことで言う―山本夏彦箴言集

ひとことで言う―山本夏彦箴言集