リレー講座の講師は、柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員)先生--中国の構造問題

リレー講座の講師は、柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員)。

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・米中貿易戦争の本当のの原因は、2018年3月の全人代での主席任期撤廃の憲法改正。これで中国の政治体制に脅威を覚えた。

・中国は経済減速による「雇用」(失業率の高まり)が怖い。2,3億人の出稼ぎは、帰農もできず、戸籍もない。犯罪の勃発状況になり、治安がオボ焼かされ、社会問題に発展する恐れがある。

・もはや大型のインフラ投資はできない。一巡。西部は山だらけ。過剰設備。介護保険がない。輸出しか道がないが、貿易戦争問題あり。2018年後半から2019年にかけて絵経済は減速する。

・習金平主席には二つの課題がある、「信用」秩序が崩れている。政府への信用、反道徳的行動の企業への信用、個人間の信用。これを立て直す必要がある。納税意識が乏しい社会で市場経済が可能であることを証明出来るか。

・製造業の躍進を掲げた「中国2025」計画は達成できるか。技術力がない。知財権保護がないので、品質があがらない。電気自動車(EV)は当面普及しない。まだ未熟な技術だ。電池劣化、専用駐車場なし、道徳・モラルが改善できないと。

・技術は50年。科学は100年。文化は100から200年。

・中国の夢とは何か。中華民族の復興。中身は? 経済はGDP2位だが技術力は弱い、ブランド力が弱い。軍事力は未知数。予算が多いが腐敗もあり、この1000年対外戦争で勝ったことがない。文革で古典文化は途絶えた、モラルは上がらない。文化力・文明力・ソフトパワー築くには100年、200年かかる。

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松本先生:多摩大総研。

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「名言との対話」10月25日。笹崎龍雄「わが輩は豚である」

笹崎龍雄(ささざきたつお。1916年9月3日-2012年10月25日)は、埼玉種畜牧場創業者(サイボクハム)。ニュービジネス大賞(金賞)。渋沢栄一賞。日高市名誉市民。享年96。死因は老衰。

関東大震災、昭和大恐慌、陸軍軍医、戦争、フィリピンの山下奏文軍司令官の参謀、敗戦、公職追放。「この戦争は物量と食糧不足で敗けた」と総括し、「食糧自給と増産が自分の使命である」と考え、養豚事業に邁進する。

育種改良の重要性に早くから着目し、当時は夢物語に近かったランドレース、デュロック等の原種豚を海外から輸入し、全国の養豚家に頒布。卓越した人柄、知性で知られた笹﨑氏は養豚後継者を育てることにも情熱を燃やし、サイボク研修生として「豚と会話ができる人間になれ」というサイボクスピリッツの薫陶を受けた養豚家は、全国の地域の養豚振興を担っている。

現在では、ハム工場あり、レストランあり、こだわり食材を並べたスーパーあり、温泉ありの、「農と食と健康のテーマパーク」に変身を遂げた。1次産業から3次産業全てを融合した理想郷をサイボクファームは実現している。年間来場者数は400万人ほど。

笹崎の薫陶を受けた弟子たちの観察は次のようだ。メモ魔。手帳。金言の人。語録。記録の整理魔。メモ、観察、熟考、整理する習慣。求道者。

1953年に大著『養豚大成』を刊行し、異例のベストセラーになり、その印税で欧州視察を行う。種豚-肉豚-精肉-ハム・ソーセージ-レストラン-調味食品と事業を伸ばした。64ページの文化雑誌、1万部無料配布の「心友」誌には「豚声人語」というコラムを書き続けた。以下、『とこトン人生九六年』から選んだ笹崎語録。

・自分の人生を創造できる人間、そして自分の職に希望と夢をもって全身全霊を打ち込んで働き、毎日の生活に情熱を燃やすことのできる人は幸せである。

・自分の人生は自分で脚本をかき、誰にも拘束されずに演出し、自分で納得のできる仕事に、全力を傾倒できる人は幸せである。

・どんな仕事でも永遠に未完成である。矛盾と問題だらけである。これを解決していくのが人生である。自分の天職に全情熱を打ち込み、その仕事とともに生きる人は幸せであり、魅力のある人である。

・私は、自分の人生(天職・事業経営)について、自分で脚本を書き、自分で演出し、自分の創った舞台で、思う存分に全情熱を傾倒し、そのなかに人間としての生きがいと、人間らしさを、自分でつかみとっていける人が、この世で一番幸せな人だと考えている。すなわち、自分の心に、しっかりした人生の羅針盤を持っている人間が、一番幸せな人だと思っている。

・豚の命をいただいて我々は生活できているから、商品になるものは、無駄なく、お客様(人間)に食べていただくことによって、豚の命に報いることができる。

・記録(メモ)を確行せよ。数字と思考で毎日の生活を科学すること。

豚のことは豚に聞け!仕事は道楽、勉強は趣味だ。農業は脳業だ。楽農。毎日が自己開発である。

以上にみるように、漢学の素養と東洋哲学に裏打ちされた金言の数々と人柄に接した人たちは大きな影響を受けた。

龍雄の息子の静雄は私と同世代で、「知的生産の技術」研究会の仲間であり、互いに30代の頃、会で埼玉のサイボクハムを集団で訪問したことがある。もしかしたら、その時に、父上にも会っているかも知れない。

 無数の金言の中で「わが輩は豚である」という言葉を発見したときは、思わず笑ってしまった。笹崎龍雄の人生はこのこ言葉に極まれりだ。植物学の牧野富太郎が「私は草木の精である」と言った境地と同じだ。笹崎はリーダーに必要なのは、「愛敬と運だ」という。厳しい指導をする人ではあったが、この人には皆が愛する愛敬もあったのだろう。高い志、食糧事業のパイオニア、そして96歳という老衰での天寿の全う。一世紀に及ばんとする人生で笹崎龍雄は、最終的に完全なる自分自身になったのではないか。

 参考:『とこトン人生96年』(サイボク文庫)