「後ろ姿探検隊」として新宿周遊。ブログで拙著『図で考えれば文章がうまくなる』が紹介されているのを発見。

後ろ姿探検隊として、新宿周遊。インスタグラムの写真投稿のテーマが決まった。

新宿ゴールデン街

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花園神社

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昼食は、「隠れ房」。

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久保田正志という人のブログで拙著『図で考えれば文章がうまくなる』の内容が詳細に紹介されている。ありがとうございます。

本の書き方 図解で構成を考える – Teatime Talk

文章を書く前に書きたい内容を図を使って整理しておくことは、多くの人が勧めている。
先の記事で取り上げた「ピラミッド・プリンシパル」のバーバラ・ミント女史もそうだし、近年流行中の「マインドマップ」も同じだ。
やり方はどれもほぼ同じで、書きたいと思う内容をキーワードか一行の文にし、それを線で囲んで、次に囲み同士を線で結び、互いの関係性を考えた上で、その書き順、すなわち本の構成を決めるというもの。

誰が一番最初に言い出したのかははっきりしないが、おそらく「図を使って文章を整理する」という基本コンセプトそのものははるか以前からあったのだろう。
筆者が取材したこともある多摩大学久恒啓一さんの『図で考える人の図解表現の技術』の出版が2002年、マインドマップの提唱者のトニー・ブザンの『ザ・マインドマップ』が日本で出版されたのが2005年で、日本ではそのあたりからブームになっていったようだ。
ここでは2005年に出版された『図で考えれば文章がうまくなる』(久恒啓一 PHP研究所)の内容を紹介してみたい。自分が取材したから言うわけではないが、Kindle版で500円と格安なわりに実践的な内容でお勧めできる。

目次

●文章を図解して理解を深める

『図で考えれば文章がうまくなる』では、
・既にある文章を図解してその構成を理解する
・文章を書く際にまず内容を図解し、構成を決めた上で書き始める
という二段階で文章の図解方法を練習するよう勧めている。

既にある文章の図解法の手順は、
1 文書を段落ごとに区切る
2 段落を構成している、いくつかの文脈ごとに、その文脈の文意を示すキーワードを(単語あるいは文)書き出す
3 キーワードが揃ったら、意味が似たもの、関係があるものは近くに置く
4 いくつかのキーワードの群れができたら、それらをマルで囲む。孤立したキーワードもマルで囲む
5 マル同士の関係を考える
並列なのか、上位にあるのか、対立しているのか、補い合っているのか
6 関係が決まったら、矢印(→)を使ってマル同士の関係を表現する
7 マルの中にいくつものキーワードが箇条書きになっていたら、それらを構造的に表現できないか考えてみる
8 マルの大きさや位置関係を変えて、実態に近づけてゆく
価値の高い情報は大きくしたり、図の中心に置くなどして重要性を強調。
他のマルを補足しているマルは、小さくして補足相手のマルの下に置く。
強い影響を与えているなら、→は太く大きく。
関係が曖昧なものには?をつける。
9 図の下にはコメントとして「この文書は何が言いたいのか」を書き込む
10 最後に図のタイトルをつけて完成
となっている。
たぶん、誰がやってもほぼ同じやり方になるだろう。
こうした整理をすると、「この文章はここが弱いのでは」という論理的な弱点が見えてくる。

●書き出す前の設計図として図を描く

文章を書く前の準備として、全体の図を作る場合、図は文章全体の構成を決める設計図の役割を果たすことになる。
『図で考えれば文章がうまくなる』では、
1 自分が書きたいメインテーマを決める
2 そのテーマに関連して書きたいと考えている項目のキーワードをどんどん書き出していく
3~10 そのキーワードを囲ったり結んだりして整理していく。そこのやり方は既にある文章を整理していく場合と同じ
11 とりあえず構成が決まったら、ある項目と別な項目がどのような論理でつながっているか(前の文に続いて議論を展開するのか、前の文の理由を説明するのか、前の文とは逆の視点からチェックするのか等)を、接続詞をつけて明らかにする
12 以上で整理は完了。あとは項目ごとに文章を書いていく
としている。

下は筆者が以前にお手伝いした仕事の企画を図解したもの。
さる心理学者の先生に「この不安だらけの時代に自信を持つためにはどうすればいいのか」という話を伺ったのだが、諸般の事情で本にならないで終わってしまった。
実際は鉛筆書きで、もっと細かい点までゴチャゴチャと描き込んである。ここに載せたのはその一部を清書したものだ。
ちなみにアマゾンを見ると『自分に自信をつける方法』という全く同じ内容とおぼしき本が上梓されているが、そちらは筆者ともこの図とも関係ない。

さて図解はできたとして、問題は「どこから書き始めるか」だ。
この点「ピラミッド・プリンシパル」では、「メインテーマから始める」一択で、考えずに済んで楽だったのだが、『図で考えれば文章がうまくなる』では、「どれから手をつけるという決まりはない」としている。
まあ世の中、経営コンサルタントがクライアント向けに出すレポートだけが文章ではないから、いろいろな切り口があるのはむしろ当然だろう。
実際に文章を書いて飯を食っている立場から言うと、書き出しというのはとにかく死活的に重要なもの。
というのもほぼ全ての読者は、最初の数行をパラパラッと読んで、続きを読むかどうかを決めているからだ。
だから世の中の著者、編集者、ライターは最初の数行でいかにして読み手の興味をつなぎ止めるか、必死になってあの手、この手を試している。それでもなかなかうまくいかない。
プロが必死になってもめったに成功しないのに、「こうすれば必ずうまくいく」なんてのたまうやつがいたら、
「ほおー。言ったなてめえ。じゃあ書いてみろ」
となってしまうだろう。

『図で考えれば文章がうまくなる』では、
「どこから始めたらいいか、わからないときは図を声に出して読んでみる」
とりあえず大事そうな部分から音読してみて、「ここだ」と思ったところから書き始める、としている。
まあ、そんなところだろう。
書き出しは書き手のセンスが問われる部分だということだ。

●文章を書くことは家を建てるのと同じ

『図で考えれば文章がうまくなる』では、「文章を書くのは、家を建てるのと同じ」としている。
家を建てるときは、
1 まず「こんな家にしたい」という構想をたてる。その際、「何のために家を建てるのか」という目的を明確にし、そこから家に必要な部屋、設備を導き出す
2 続いて設計図を描く。考えられる問題は極力、この段階でつぶしておく。そうしておかないと、いざ建て始めたときにトラブルが続出する。時間をかけ、人の意見も聞いて問題点を指摘してもらう
3 設計図ができたら、内装や材質、色など細部を詰める
4 工事開始
という段取りになる。
文章を書くときも、それと同じ段取りを踏めばよいということだ。

これから書く文章の大筋が最初から見えていると、余裕を持って文章を書くことができる。
文章を書きなれていない人は、目の前の細かな部分に囚われて全体の方向性を見失ってしまいやすい。ちょうど目前の景色を見ながら歩いているうちに、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうようなものだ。
あらかじめ書く内容を図解しておけば、その心配もなくなる。

●どうやってふくらませていくか

図解はひと目で全体の構成を見て取れるように、1枚の紙の上に描くのがコツだ。
しかしそれをベースに書く文章は、簡単なレポートから論文、書籍に至るまで様々で、それぞれの形式により長さが大きく異なる。
文章化の過程で大量の情報をつけくわえる必要がある。図を骨格とすれば、文章化とはそこに肉づけしていく作業ということだ。図という骨格に沿って、粘土を貼り付けていくように情報をつけ加え、層を厚くしていくことで、大量の文章が簡単に書け、かつ読み手にとって論理的でわかりやすいものになる。

実際に囲みを矢印を結んだ図を元に文章を書こうとすると、部分同士のつながりが問題となる。
「この矢印は論理的にどのような意味なのか」を正確にするために、→の横に、接続詞「したがって」「しかし」「なぜなら」「これについて」「その結果」「その原因は」等を書き添えるとよい。
矢印なしでただ並んでいる場合も、キーワードとキーワードの間に「ならびに」「または」などの接続詞を入れてみて、論理的な関係を明白にする。
文章化していく際には、囲みでくくられたキーワードの周囲に、知識、体験、具体例などを、接続詞で関連づけながら、どんどん挿入していく。
また要所要所で、自分の感想や意見、主張をつけ足してゆくことも、それぞれの項目の位置づけをはっきりさせたり、印象づけたりする上で有効だ。

・原稿用紙はよく知られているように、1枚=400字。
・Wordなどで作るA4の文書は、1枚=約1200字(原稿用紙3枚程度)
企業でも簡単な業務レポートはA4で2、3枚というところだろう。それだと3000字前後。
これくらいなら、図解した内容を項目ごとに少し詳しく説明して、写真を2、3枚添えれば完成だ。
・大学で提出する論文は通常、1万2000字(原稿用紙30枚)ほど。
ここまでふくらませるには、各ポイントの論拠となる事実や理論をきちんと書き込む必要が出てくる。
・一般に出版される書籍の場合、短くて1ページ40字×16行、200ページ弱ぐらいから。
これで12万字(原稿用紙300枚)くらいになる。
ここまで長く書くには、具体例やエピソードなどが相当必要になる。それを冗長に感じさせず、逆にエピソードによって主張にリアリティ、説得力を持たせてゆくのが腕の見せどころだ。具体性の高い情報を付け加えることで、読んでおもしろく、役にも立つ文章になってゆく。

●図解しないで文章を書き始めるのは、設計図なしで家を建てようとするようなもの

久恒さんは大学の先生なので、卒論の指導も行っている。
卒論の文字数は2万字程度で、1万2000字ほどの一般のレポートよりは長めだ。
作成の手順は、
1 まずテーマを決める。先生と話し合う
2 本人が全体図1枚および各章ごとに1枚の図を作る(全部で数枚)
3 本人が描いてきた図を、オープンな場で先生と仲間がチェックして意見を述べる
4 2~3を数週間にわたり、何度か続ける。その過程で使う資料なども図に書き込まれる
5 先生のOKが出たら、論文を書き始める
というもの。

大事なのは「全体の論理構造がきちんとしているか」「各章の論理的な位置づけは明快か」「資料の使い方は決まっているか」といったことで、図解の段階の完成度が高ければスムーズに書き進める。
逆に図解の論理に甘さがあると、文章化の過程で論理の矛盾が明らかになってきて、手が止まってしまうという事態に陥る。
行き詰まった場合は、図に問題がある。論理を見直して図を修正したり、これまで気づいていなかった関係性をつけ加える必要が出てくる。
書き出してから得た情報により、いったん作った図に疑問が出てくることもある。その場合も修正を加える。「図解の進化は理解の深化」と考えること。
図を直したら、それをベースにして書いた文章にも修正を加えていく。

文章を家、図解をその設計図と捉えるなら、
「図解しないで文章を書き始めるのは、設計図なしで家を建てようとするようなもの」
ということになる。
まあ、書き慣れてくればそれでも家は建てられるのだが、図解がいい準備になることは間違いない。
とくに文章を書き慣れていない人の場合、まずは「何を書きたいのか」をはっきりさせることが大切で、そのためにも図解することが役に立つだろう。

みなさんにもぜひ一度、図解してから文章を書いてみることをお勧めしたい。

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「名言との対話」1月13日。「自分もワキになったつもり、つまり、舞台の上に立って参加しているようにイメージしながら見てはいかがかと思います。能は、参加型の芸能なのです」

片山 幽雪(かたやま ゆうせつ、1930年昭和5年)8月26日 - 2015年平成27年)1月13日)はシテ観世流能楽師。京都片山家九世当主(片山家能楽京舞保存財団理事長)。重要無形文化財保持者(人間国宝)。日本芸術院会員。日本能楽会理事長

 能楽は、日本の伝統芸能であり、狂言とを包含する総称。 重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。奈良時代に中国から伝わった散楽が、猿楽、そして能楽と呼ばれるようになり、室町時代観阿弥があらわれ、曲舞を導入し、芝居や歌舞と一線を画すようになったとしている。

幽雪は八世 片山九郎右衛門京舞井上流四代目井上八千代の長男として生まれる。5歳で初舞台を踏んで以来、父および観世華雪観世雅雪に師事。1985年九世 片山九郎右衛門襲名。以降芸術祭優秀賞(3回)、日本芸術院賞紫綬褒章などを受賞、1995年(平成7年)日本芸術院会員、2001年(平成13年)人間国宝。2009年観世流「老分」となり、また文化功労者に認定。観世宗家より雪号を許され、翌年より片山幽雪を名乗る。観世流では特に功績を挙げたものだけに「雪」の文字を名前につけることができる。「一つは残して冥土でやる」と言われる能の秘曲・三老女すべての舞台を勤め、最高位の秘曲である「関寺小町」を生涯に三度演じた不世出の名人だ。

片山家は、江戸時代の明和期(1764~1772)より、京都における「能の家」。観世流シテ方として、無形の文化財を守ってきただけでなく、能面や能装束といった有形の文化財も明和期以来250年近く保存してきた。母の四世井上八千代が京舞で、そして長女の五世井上八千代も京舞で、人間国宝に認定を受け、三代にわたり人間国宝が出ている。

面を被った主役のシテに対し、ワキは僧侶、神職朝臣、武士などの役柄が多く、かならず男性であり,現実の生きている人間の役であり、面を被っていない。ワキはシテの演技の引き出し役である。観客はこのワキになったつもりで、能を楽しむのがいいのだそうだ。「参加型の芸能」とは、幽雪と長男の片山清司が一緒にインタビューを受けた時の言葉であるが、幽雪も同じ見解とみていいだろう。能の稽古場を一度見たときには敷居が高く感じたのだが、能は参加型の芸能と考えれば親しみが湧く。