東京芸大美術館『丸山応挙から近代京都画壇へ』展。ーーー応挙は革命を起こした。呉春は師二人の融合を試みた。栖鳳と松園は伝統を統合し新たな一派、新しい日本画を志した。

東京芸大美術館『丸山応挙から近代京都画壇へ』展。

新興町人層が勃興した江戸時代中期に活躍した丸山応挙は、「見て、感じて、体感させる画」という新しい写実画を引っ提げて登場する。若冲と蕪村という二大画家より17年の年少である。従来は手本にならった山水画が中心であったのだが、応挙は現場を映すという意味での「写生」という考え方で京都画壇を一変させた。

.人物、鳥、動物、風景、などすべてをの姿形を正確に写生し、生き生きとした生命感を表す、その上で本物に見えるように新しい構図を考え出す。基礎的訓練と創意工夫である。

但馬の大乗寺は応挙寺と呼ばれる。応挙と門人の呉春ら13名が165面の襖絵を描いている寺である。襖絵は座ったとき背後にあり、羽織るものである。低い位置から見るものなのだ。仏間を中心とした立体曼荼羅の構成になっている。農業の間、孔雀の間、芭蕉の間、山水の間、藤間の間、鯉の間、狗子の間、仙人の間、使者の間、禿山の間、仏間、鴨の間、猿の間。仏をとりまく世界を描いた。これが応挙の世界観だ。応挙は大乗寺襖絵を完成させてまもなく没している。ライフワークだったのではないか。

文人画の蕪村に師事していた呉春は、蕪村没後は応挙の門人となる。文人画と写生画を融合する。その弟子たちも住んだ四条に因んで四条派と呼ばれるようになる。しだいに四条派が力を増してくる。丸山・四条派である。

この流れは、近代まで続き、竹内栖鳳上村松園などの近代京都画壇を構成した。竹内栖鳳は、四条派のつけたて、狩野派の線描、西洋画のデッサンを統合しようと新しい日本画を目指した。上村松園は二人の師の長所に自分の良い所を加えて一派をあみ出そうと考える。

応挙は革命を起こした。呉春は師二人の融合を試みた。栖鳳と松園は伝統を統合し新たな一派、新しい日本画を志した。

円山応挙から近代京都画壇へ

円山応挙から近代京都画壇へ

 

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ジム:スイミング300m。

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 「名言との対話」8月29日。三浦哲郎「僕はこれから、三浦は頭にきたのではないか、そう思われるような小説が書きたい」

三浦 哲郎(みうら てつお、1931年3月16日 - 2010年8月29日)は、日本小説家。

早稲田大学政経学部中退。早稲田大学文学再入学。1955年 『十五歳の周圍』で新潮同人雑誌賞。1961年忍ぶ川』で第44回(1960年下半期)芥川龍之介賞。1976年 『拳銃と十五の短篇』で第29回野間文芸賞。1983年 『少年讃歌』で日本文学大賞。1985年 『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞。1990年 「じねんじょ」で川端康成文学賞。1991年 『みちづれ』で伊藤整文学賞(小説部門)。1995年 「みのむし」で川端康成文学賞。上記の賞の受賞歴と、1984年から2003年の年度末まで芥川賞選考委員を務めたように、大御所となった作家である。

エッセイには日常と本音と人生の意外な側面が突然現れるので、私はこの「名言との対話」を書く時もできるだけ手に取るようにしている。今回三浦の『一尾の鮎』を読んでみた。

夕方の6時に仕事を終えて食事を摂りながら寝酒を飲んで8時には寝てしまう。馴染みのない地方からの講演は引き受ける。海外旅行では帰りの機内で収穫を拾って手帳に書き留める、それが随筆の断片になる。早稲田の学生の頃、同人誌に発表した作品が機縁となって井伏の知遇を得た。しかし、旅、酒、将棋は習わなかった。川釣りを習わなかったことは残念に思っている。荻窪の井伏家と同門の開高健には親しみを感じている。鉞(まさかり)の形をした下北半島と40キロと日本一長い佐田岬半島。、、、、。

最後に本のタイトルにもなった「一尾の鮎」という文章がある。随筆も一個の作品と考えていた三浦は「絶えず鮎のような作品を書きたいものだ」と念じていた。日経新聞夕刊に週に一作原稿用紙3枚を書くのはやはり辛い作業だったようだ。この随筆の最後は「書くものすべてが生きのいい鮎のようであれ」と結んでいる。モーツアルトの「充分に表現するためには、決して表現しすぎないこと。しかもそれでいて完全に表現すること。ただし、ごくわずかの言葉で表現すること」という教訓を、短編小説を書くときの自戒にしている。三浦によれば、碁は長編小説で、将棋は短編小説だ。碁は布石をしておいて最後に網を引き絞る。将棋は一手一手が勝負の連続であり短編小説に似ている。私の「名言との対話」も短編小説を書いてるようなものだ。若鮎のような文章を書きたいものだ。

三浦哲郎の小説はまだ読んでいない。しかし、三浦が色川武大に語っていた「頭にきたのではないかと思われるような小説」とはどんなものなのだろうか。興味が湧いた。

随筆集 一尾の鮎

随筆集 一尾の鮎