2019年秋のリレー講座、初回は寺島学長の講義。

 昼:多摩大総研ミーティング

寺島学長と懇談:総研の未来プロジェクト。出版計画。仏教。梅棹忠夫著作集。小説。共通の知人たち。新刊『戦後日本に生きた世代は何を残すべきか』(寺島実郎佐高信)をいただく。多摩大出版会のバートル先生の新著、、、。

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 2019年秋のリレー講座。

 ・危機感:このままでは日本は大変なことになる。「考える力」をとり戻そう。新聞購読者数この1年で230万部減。スマホ人生。「滅びる色は明るい」。

・日本の埋没:日本の世界におけるGDP比。1950年3%、1988年16%(アジア6%)、2000年14%、2018年6%(アジア23%)、2030-40年代3%(アジア30%超)か。戦後は3%から16%へ(工業による奇跡の復興)、平成は16%から6%へ(アジアダイナミズム)。令和は6%から3%「へ。この10年、なかんずくこの5-6年にDGP比率は急速にダウン。

・技能オリンピック:2019年は7位。2006・2007年は1位だった。現場力オリンピック。日本の産業力の基盤の劣化。経団連研修:経営企画部長・人事部長らはアジア駐在にシフト。経営は頭から腐る。関電事件。日本は経営力・現場力との劣化が著しい。

・なぜこうなったのか? デジタルエコノミーの時代に劣後した。株価時価総額はGAFA+M(4.3兆ドル468兆円)とBAT(0.9兆ドル・101兆円)で計52兆ドル。日本はトヨタ22.9兆円、ソフトバンクG11.8兆円、NTTドコモ8.7兆円、ソニー7.8兆円、キーエンス7.7兆円で計58.9兆円。工業生産力モデルの優等生日本はIT革命を、回線業、eビジネス、電子部品と理解して、「ビッグデータの時代」の乗り遅れた。アマゾン・フェイスブックらは「金融」を狙っている。

・日本企業の株価時価総額:2019年:トヨタ22.9兆円、ソフトバンクG11.8兆円、NTTドコモ8.7兆円、ソニー7.8兆円、キーエンス7.7兆円、三菱UFJ銀7.2兆円、ソフトバンク7.0兆円、ファーストリテイリング7.0兆円、KDDI6.7兆円、リクルート6.3兆円。オリエンタルランド5.3兆円、日立3.8兆円、日鉄1.8兆円、東レ1.2兆円。

・日本の株価は膨らました数字だ。日銀の異次元の金融緩和は犯罪的。麻薬を打ち続け正常化できない。マネタリーベース(資金供給)は5倍。貸出残高は+18%のみ。財政出動による借金は1000兆円を超えた(1108兆円)。株価だけ高くなっている。2010年の2.1倍。GPIF(年金資金)の投入、日銀のETF買い(日銀が直接株を買う)。年内に日銀が日本株式会社の第1位の株主になる。そして消費税10%によって可処分所得は月5000円ダウンする。

アメリカは景気好調時に12回の段階的利上げを行った。景気に配慮し少し下げて調整。日本の景気は劣化するがマイナス金利のためもう打つ手がない。ユニクロの柳井CEO「マイナズ金利が一番の問題。経済倫理を打ち壊す」という。

・政治:改革幻想。政治疲れ。小選挙区制。しかし議員定数は減らず参院選では増えた。行革では省庁再編でも人数は減らなかった。小泉郵政改革で地方は疲弊した。「働き方改革」は、働かない改革になっている。日米自由貿易協定でも農業が痛めつけられ、自動車は継続協議というていたらく。食糧自給率38%。せめてイギリス並みの70%に。エネルギーと食糧の外部依存が大問題。円安は有利ではなく、円の価値を高めていくべきなのだ。

・これからのキーワード:「アジアダイナミズム」「デジタルトランスフォーメーション」「ジェロントロジー」。アジアが日本の10倍になっていく。東アジアでは中国の強大化と強権化。香港の暴動が長引いているのはなぜか。そのキーワードは大中華圏だ。台湾、シンガポール、そしてアセアンに3000万人、世界に7000万人いり華僑・華人のネットワークが支えている。香港は中国から6000万人が訪問していたが、4割減少している。最後のあだ花になる。

日本は近隣の悪口を言うのではなく、一次元高い思考が求められている。

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終了後。

高橋さんと懇談。知研宮島。広島。京都。岡山。50周年イベント。、、、

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夜は杉田副学長らとの懇親会。

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 「名言との対話」10月3日。犬養孝「万葉旅行」

犬養 孝(いぬかい たかし.1907年4月1日 - 1998年10月3日)は日本文学者万葉学者)。

大阪大学甲南女子大学名誉教授文学博士文化功労者高岡市万葉歴史館名誉館長。

 4500首の7割が恋の歌であり、歌の博物館である万葉集、その万葉研究の第一人者である。。万葉ゆかりの土地1200か所をすべて実際に歩いて調査するという大事業を成し遂げ「万葉風土学」を確立した。そして万葉の風土景観を守る運動を生涯の仕事とした。また、テレビ・ラジオ番組や公演などで多数の人に万葉集をひろめた。万葉歌に旋律をつけて朗々と歌う「犬養節」でおおくの万葉ファンに親しまれた。ユーチューブで今回聴いてみた。 日本全国の万葉故地に所縁の万葉歌を揮毫した「万葉歌碑」を建立、故地をまもる活動に奔走した。犬養揮毫の万葉歌碑は131基におよぶ。 

勤務先の大阪大学万葉旅行の会は、20年間で112回に及び、18514名の学生が参加した。1回平均は170名、80名から450名という参加者数だ。その後も、続けていた。

2000年には奈良県明日香村に犬養を顕彰し関係資料を展示する「犬養万葉記念館」が完成した。私は2014年に、飛鳥寺、岡寺を訪問したとき、寄ろうとしたがあいにく休みだった。2010年に日高市大字高麗本郷巾着田に歌碑を訪ねた。入間地の おほやが原の いはいずら 引かばぬるぬる 吾に絶えぞ?)。(武蔵国府中から上野国邑楽郡に至る官道である入間道のおおやが原のいわい葛を引けば、ぬるぬる寄ってくるようにあなたと私の仲を絶やさないでください)は犬養孝の揮毫だった。2017年。山梨県の万力公園を訪ねた。万葉の動植物の公園だ。こkでは犬養孝の解説が本人の声で聴くことができた。

万葉集には4500余首あり、遣新羅使の歌が145首ある。当時日本と朝鮮の間はうまくいってなかったから空しく思う人たちの歌は、望郷や妻を想う歌が多い。この使節の歌は、私の母も研究していたので馴染みがある。また、「多摩川に さらす手づくり さらさらに 何ぞこの子の ここだ愛しき」は、多摩川で手作りの布をさらす、そのさらすではないが、さらにさらにどうしてこの子が滅茶苦茶にかわいいのか、という犬養孝の現代語訳だ。

 犬養孝は学生たちとの万葉旅行も含め、万葉ゆかりの1200か所をすべて訪ねるという快挙を成し遂げている。テーマを持った旅は素晴らしい。私の母も万葉歌碑の旅を続けていたので親しみがある。犬養孝の仕事に励まされて、私も「人物記念館の旅」を続けよう。 

万葉のいぶき (1975年)

万葉のいぶき (1975年)