リレー講座最終回。寺島学長「2020年新春展望ーー日本人として考えるべきこと」

リレー講座最終回。寺島学長「2020年新春展望ーー日本人として考えるべきこと」

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・3つの数字。2019年の新生児は86.4万人。2016年に100万人を切った。大学のビジネスモデルも成り立たない。新聞(全国)の発行部数3487万部。2010年から1000万部減少。朝日も500万部切れ。ネット社会は分断を助長。日銀は日本株を31兆円保有し、日本生命ブラックロック外資)を抜き日本株式会社の筆頭株主となった。GPIF(年金)と日銀ETF買、そして外資で株高になっている。三分の一かさ上げ。

・「ロンドンエコノミストの2020年の展望」。キーワードと欧州の視点。2020年は「鍵握る米大統領選、グローバルソローダウン」。米大統領選はAI予測ではトランプ再選はない。世界経済は同時好況から3.8、3.6、3.0(2019年)と減速を予測。ドイツ0.5、イギリス1.2 、日本0.9。ブラジル0.9、ロシア1.0.中国6.1、インド6.1。実質世界貿易は5.7.3.6、1.1(2019年)。以上、実体経済

・金融経済は肥大化。アメリカの株価は2017年から4割上昇。日本は2割上昇。事業会社の借金は188兆ドルで1.7倍、GDPの2.3倍。

・日本のアベノミクス。金融緩和はマネタリーベースは5倍だが、貸出残高は変わらない。余った金は株に。財政出動で国の借金は1103兆円(2018)と膨らんだが、国民には恩恵はない。企業経営。人件費・設備等首位は横ばい、内部留保と配当金が増えている。全体として「格差」が大きくなった。年収1200万以上は1割以上の増加。400-500万の中間層は没落。勤労者世帯可処分所得はピークの1997年の49.7万円、2018年45.5万円で月4.2万、年間で50万円のマイナス。世代間格差も拡大。

・2020年の世界。米中2極論、新冷戦の時代。米ソ冷戦は体制選択、理念の戦いだった。新冷戦は自国利害の対立。だが、米中の失敗が深まっている。アメリカの中東での失敗。1919年のベルサイユ条約から100年、オスマン帝国の解体、石油、1968年のスエズ以西からの撤退で大英帝国からアメリカ中心に変化。1979年イラン革命からアメリカの迷走が始まる。敵の敵は味方でフイラクのセインをバックアップ、イラク戦争、結果としてシーア派の三日月の成立、イラクシーア派になってしまった。イラン革命防衛隊はもともとアメリカが支援していた。失敗の連続だ。トルコやイランの力の増大とはオスマンの復活だ。イランとの戦争があれば第二のベトナムになる。中東は準戦時体制。

中国の失敗。香港での失敗により台湾は民進党蔡英文が浮上している。7000万人の華人・華僑、アセアンに3300万人。ネットワーク型発展。一国二制度に懐疑、習近平に幻滅し、彼らの信頼と期待を失った。台湾の独立機運が強くなる。広州・深センマカオ・香港は道路でつながり大経済圏となった。香港から亡命者が多発。

・日本は中東で領土的野心を持たない技術を持った先進国と尊敬されている。イギリスはBREXITで疲労困憊による合意となった。GPS(ガレリオ)に残るか、自前か、アメリカ、インド、中国と組むか。日本、モンゴル、東欧、、。

・日本。技術を持つ先進国、成熟した民主国家としての主体性が重要。平成の始まり時に日本は世界GDPの16%、アジアの3倍。現在は6%でアジアが日本の4倍、将来は3%で、アジアは日本の15倍になる。アジアダイナミズムの吸収をいかにするか。令和の時代には「宗教」が隠されたテーマになる。もともと天皇家仏教徒だった。明治から敗戦まで国家神道天皇は神の一族。明治憲法教育勅語)の時代だった。自民党憲法草案第1条は天皇の元首化になっている。象徴天皇制の否定。

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・多摩大総研ミーティング:けやき出版関係プロジェクト。

・知研の高橋さん:野田先生。八木会長、、。

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「名言との対話」1月9日。円谷幸吉自己を裏切れば、その結果が成績として現われる。正しい生活、正しい精神、正しいトレーニングにより、実力が発揮される」

円谷 幸吉つぶらや こうきち、本名:つむらや こうきち1940年昭和15年)5月13日 - 1968年(昭和43年)1月9日)は日本の元陸上競技長距離走マラソン)選手、陸上自衛官

1964年の東京オリンピック最終日のマラソンで、ゴールの国立競技場に2位で戻ってくる。だが、「男は後ろを振り向いてはいけない」との父親の戒めを守り気がつかず、トラックでイギリスヒートリーに最後に追い抜かれ、銅メダルを獲得し日本中が湧いた。金メダルはアベベエチオピア)だ。円谷は次の目標を「メキシコシティオリンピックでの金メダル獲得」と円谷は宣言した。しかし無理を重ねたたため、腰痛が再発し、病状は悪化して椎間板ヘルニアを発症する。最後は自殺する。享年27。

2015年に関西のテレビ出演のため、円谷幸吉のことを知る必要があり、東北新幹線新白河、そこから乗り換えて須賀川市へ向かったことがある。 須賀川ウルトラマン円谷英二監督の故郷で、駅前にはウルトラマンの像が建っていた。円谷幸吉メモリアルホールに向かう、

地元の福島民報の10月22日は一面で「あっぱれ円谷、高々と日の丸」とある。夕刊でも円谷の記事で埋まっていたが、「中国、ウラン使用 米原子力委 核爆発実験で発表」という記事や、「フランス EEC脱退を警告 ドゴール大統領」などの記事も目に付いた。そういう時代だったことがわかる。円谷は色紙を頼まれると多くのばあい「忍耐」と書いた。結婚を考えた女性もいたのだが、上官の反対でつぶれてしまう。

円谷の遺書が話題になった。「父上様母上様三日とろろ美味しうございました。」から始まり、近親者への謝辞と激励、そして最後は「父上様母上様 幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません。何卒お許し下さい。気が休まる事なく、御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。幸吉は父母上様のそばで暮らしとうございました。」で終わる。涙なしには読めない遺書である。三島由紀夫川端康成が、激賞していた。

『栄光と孤独の彼方へ 円谷幸吉物語』(青山一郎)を読了。努力、忍耐、重圧、体の不調、失恋、、、。また沢木耕太郎『敗れざる者たち』(文春文庫)の中の円谷幸吉を描いた「長距離ランナーの遺書」は、最初は次の問いで始まる。「長距離ランナーは、果たして「走れなくなった」からといって死ぬことができるのか?」「円谷幸吉とその死の間にある亀裂をこの手で埋めてみたい、とぼくは思った」。最後は、次の問いで終わる。「もし、アベベの足の状態を円谷が知ってたとしたら、円谷は果たして死んだであろうか、と」。

冒頭で紹介した「正しい」を連発する言葉も、生真面目で努力家であった円谷幸吉の人柄と人生観をほうふつとさせる。自衛官の円谷は国家プロジェクトで期待され抜き差しならない立場に追い込まれてしまった。2020年の東京オリンピック選手たちの中には「楽しみます」という人もいるが、同じような感覚はまだ残っているように感じる。今度はどのようなドラマが待っているだろうか。

栄光と孤独の彼方へ―円谷幸吉物語