高尾山

体を動かしたくなって、車で行って、高尾山に登った。人はまばらだった。

登山道の入り口には「祈願 国土安穏」と「祈願 被災地復興」が掲げられていた。コロナ禍への祈りをするにはふさわしいか。

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「名言との対話」4月16日。ジャン=ポール・サルトルあなたは、あなたの一生以外の何ものでもない」

ジャン=ポール・シャルル・エマール・サルトル: Jean-Paul Charles Aymard Sartre [ʒɑ̃pɔl ʃaʁl ɛmaːʁ saʁtʁ]1905年6月21日 - 1980年4月15日)は、フランス哲学者小説家劇作家

サルトルは10歳あたりから物語を書き始める。中学生では、自分は天才だと思い始める。若きサルトルの志は偉大な哲学者スピノザと、偉大な作家・スタンダールであることを同時に達成することだった。パリの高等師範に学び、3歳下で女性の解放をうたうヴォ―ヴォワールと出会い、婚姻という形ではなく自由な関係を持った伴侶とする。卒業後、30代中ごろまで地方の高校教員をしていた。日記と手紙を書く日曜作家だった。

第二次大戦中に軍隊に入ったサルトルは、日記を書く。軍隊生活の観察、会話や議論、読書ノート、自己の見直し、独自の考察などが書かれている。そして書簡性過労とも自嘲しているように膨大な手紙を書いている。

33歳、7年の歳月をかけた『嘔吐』でデビュー。第二次世界大戦終了直後に40歳で、未完となった長編小説『自由への道』の第一部「分別さかり」と第二部「猶予」を同時刊行した。その後、サルトルは演劇や、評伝に向かう。

サルトルのメッセージは「実存は本質に先立つ」という実存主義である。人間はまず現実に存在する(実存する)。人間の本質がなんであるかを定めるのは人間自身だ。サルトルを有名にした「実存主義」には、私も20歳前後で本を読み触れた。内容は理解できたとは思わなかったが、「実存」という言葉は卒業時まで頭の中に残っていた。

サルトルはフランス社会が重大問題に直面したとき、旗印を鮮明にし、つねに向うべき方法を国民に示している。困難な問題を避けることなく、悩みながらも立ち続け、明快なメッセ―ジを発信した。時代と正対し、知識人の政治参加を説いた姿は、世界中に共感者を生んで、大きな影響力を持った。1964年にはノーベル文学賞の受賞を辞退している。

今回、サルトルの『自由への道』第一部「分別ざかり」を読んでみた。若い主人公たちは、年齢を意識しながら、青春から大人の世界に入ることを躊躇している。社会の圧力に抗しながら、自由を論じ、つかもうとする。男女や友人同士の会話が深い意味を持つ小説だ。

さて、実存主義と自由についての思索を深めるべく、サルトルの言葉を拾ってみよう。

「人は自分自身によって作り上げた存在に他ならない。そのために大切なのは選択であり、機会ではない。それが実存主義の根本理念である」「実存が本質に先立つとは、この場合、何を意味するのか。それは、人間はまず先に実存し、世界内で出会われ、世界・内・存在に不意に姿を現し、その後で定義されるものだということを意味する」「

自分は自分自身で作り上げたものにほかならない。それが実存主義のもっとも重要な原理だ」「生まれるまでは、あなたの人生は存在していなかった。それを意義あるものにするかはあなた次第であり、人生の価値はあなたの選択にかかっている」

「人間は自由の刑に処せられている」「人間は、自らの行動の中で、自らを定義する」「人間は自由であり、つねに自分自身の選択によって行動すべきものである」「個人の責務とは、自らが望むことに取り組み、好きなことを考え、あるべき自分になり、全てのアイデアや人との出会いを活用することだ」「我々の自由とは、今日、自由になるために戦う選択の自由以外の何物でもない」「自由であること、それは望み通りの事ができることではない。できる事をやりたいと望むことである」。

他にも、名言は多い。「人間の価値は現在持っているものの総和ではなく、まだ持っていないもの、これから持ち得るものを含めた総和である」「他者がこうあるべきとする自分の姿を強く、根気強く拒絶し続けて、初めて我々は自分自身であることができる」「運命というのは、その人自身が作りあげるものである」「日記は自分の内部に起こりつつある事を、はっきり本人に知らせてくれるものだ」「3時という時刻は、いつも何かをするには遅すぎる時刻であり、何かをするには早すぎる時刻である」

サルトルの言葉から何を選ぼうか。「人間の死ぬのはいつも早すぎるか遅すぎるかである。でも一生はちゃんとケリがついてそこにある。一本、線が引かれたからには総決算しなければ。あなたは、あなたの一生以外の何ものでもない」。自分は自分が紡いだ一生によって自分の存在を証明するほかはない。これまでと、今と、そしてこれからが自分を形づくっていく。 

自由への道〈1〉 (岩波文庫)

自由への道〈1〉 (岩波文庫)

  • 作者:サルトル
  • 発売日: 2009/06/16
  • メディア: 文庫