『文芸春秋』7月号。総力特集 「コロナ後の世界」から。

文芸春秋』7月号。総力特集 「コロナ後の世界」から。

文藝春秋2020年7月号

文藝春秋2020年7月号

  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: 雑誌
 

 塩野七生「日本への関心が低下」「記者会見の全面開放・同時通訳の活用・参加人数の増加」。藤原正彦「感染者減は民度の高さの勝利」「自粛要請だけでコロナを抑え込んだ」。ビル・ゲイツパンデミックの主たる出来事はこれから起こる」「ワクチンなしに日常は戻らない」。磯田道史「政府は経験不足だったが、国民が世界一優秀な衛生的行動で補った」。エマニュエル・トッドグローバリズムに対する最後の審判」「ベルギー77.4。スペイン58.0。英国50.0。フランス40.4。ドイツ9.5。日本・韓国0.5(人口10万人あたり死者数)」「政治家や官僚たちの虚偽ばかり発表や会見」。岸田文雄「リーダーは人の話を聞くのが大事」。石破茂「地域分散・内需主導型経済」。柳田国男「ゆがんだ限定的なPCR検査体制を柱の一つにしたのはなぜか」「致死率:フランス19.4%。イタリア13.7%。スペイン11.6%。ドイツ4.2%」。石井妙子「ゼロを並べた公約はどれも達成されていない」。船橋洋一「日本モデルではなく、日本の謎」「欧米の敗北、アジアの勝利」「中・日・韓・台・タイ」。中野信子「危機の時代は人間の脳は考えることをやめたがる」。中西宏明「デジタルの強みはリアルタイムに状況をつかめること」。安田峰俊「第二波の封じ込めは在日外国人をいかにケアできるか」。出口治明「子連れ出勤」。大村智「きれい好きは危険」。川端裕人「ワクチン、治療法、集団免疫がいずれも確立しない暗黒の未来」。倉本聡「明らかな戦争」。土井善晴「料理は感覚や神経系のトレーニング」「料理は人間の自立」。宮田裕晶「これからの社会に必要なのは、社会にある課題を見つけて、チームで解決する力」「生存のプレッシャー。価値の創出の仕方を変える。次のリーダー」。保阪正康「疫病とファシズムの足音」。蓋棺録「岡本行夫74歳。新型コロナ。4月24日」「岡江久美子63歳。新型コロナ。4月23日」「皆川達夫92歳。老衰。4月19日」「井波律子76歳。肺炎。5月13日」「リトル・リチャード87歳。骨ガン。5月9日」。

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「名言との対話」6月13日。木暮実千代私は人様に見られる商売よ。いついかなる場合にも、辛辣な人の目を意識して、いかに自分の魅力を引き出すかに心血を注いでいるんですもの」

木暮 実千代(こぐれ みちよ、1918年1月31日 - 1990年6月13日)は、女優

梅光女学院卒。日大芸術学科在学中の1938年松竹大船に入社し、「愛染かつら」でデビュー。妖婦型の美女として、「木石」の好演などで人気スターの地位につく。夫の仕事の関係で満州に住む。終戦後に苦労して帰国。女優として復帰し、「酔いどれ天使」「青い山脈」「執行猶予」「雪夫人絵図」「帰郷」「自由学校」「源氏物語」「千羽鶴」「祇園囃子」「赤線地帯」など350本以上の映画に出演。のち、テレビや舞台でも活躍する。

CM出演した女優第一号でもある。「マダム・ジュジュ」や「サンヨー夫人」のCMは有名だ。経営の才にも富み、テレビ番組の企画・製作会社や芸能タレント養成会社などを経営した。

ボランティア活動にも熱心で、1957年群馬県にある「鐘の鳴る丘少年の家」の後援会長に就任した。1973年からは法務大臣認定の保護司になっているから、その志は本物だった。1980年には日本中国留学生研修生援護協会常任理事になり、中国留学生を自宅に寄宿させていた。

 終戦直後、有楽町のガード下で靴磨きをしていた戦災孤児に「寒いでしょう。さあ、これでなにか温かいものでもお食べなさい」と100円札を2枚渡した。アメリカに渡り苦学し大学を出て、高校の教師となった少年は、余命いくばくもない木暮に会うためにアメリカから帰国し、再会を果たしたというエピソードもある。

ライバルだった高峰三枝子の息子が1977年覚醒剤容疑で検挙されたことがあった。四面楚歌の高峰親子に暖かい手を差し伸べ、保護司として息子を監督下に置き、立ち直らせている。

社会福祉運動の資金集めのために 「木暮劇団」を率いて年3回地方公演を行っている。木暮実千代の通夜の日は、保護司として面倒をみた人たちの「先生!」と泣き叫ぶ声が続いた。出棺まで泣き続けた人や「ぼくのお母さん!」と叫び泣く中国人留学生たちも大勢いた。

CMで縁のあった三洋電機の工場を訪問したとき、後藤清一副社長は部下に写真を撮らせた。綺麗で活気がある表情、歩く姿、横を向く姿、腰掛けた姿、どれもこれも一つの芸術であった。一方、社長、副社長の写真は、見苦しかった。部下に「もっとほかに撮りようがないのか」と叱ったときに発した言葉が、木暮の「人様に見られる商売よ。、、」だった。経営者は見られているという修練を積んではいない。職業を通じての修練の差であると「修練」という言葉を使った。修練とは心身を鍛えることである。一つの職業を究めることは、修練を積むことだという思想の表明である。映画やテレビでよく見かけた記憶はあるが、映画やテレビで活躍する女優という職業を超えて、社会問題の解決に向けて地道で継続的な活動を続けた木暮実千代という人物の生涯に感銘をうけた。