最近、企業の経営者や人事担当者と会う機会が多い。その場で「わが社には考える社員がいない」という悩みを様々な表現で打ち明けられる。電力会社も、光学メーカーも、自動車メーカーも、製薬会社も、新聞社も、情報会社も、そして行政機関も、同じ課題を背負っている。人材に関する現在の一番大きなテーマは「考える力」を持った社員の育成である。
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この稿で扱う「図解力」は、その問いへの回答である。2002年に私が書いた「図で考える人は仕事ができる」(日本経済新聞社)が話題になった。仕事の本質は問題解決であり、図を使うことによって考える力を呼び起こし、現場の問題を高いレベルで解決しようと提唱した本である。図解はプレゼンテーション力が身に付くという面が強調されてきたが、実は「考える」という部分がもっとも重要なポイントなのである。図を描くということは、考えるということだ。「図解力」についての知識や技術は、その後の私の著作を読んでいただきたいが、この稿ではこの分野を深めるための書物をいくつか紹介したい。
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「知識創造企業」
「情報選択の時代」
「一目でわかる表現の心理技法---文書・図表・イラスト」
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企業の永続的な発展は、鳥の目で全体を見ながら足元の現場の問題解決に当たることができる「考える社員」がどの位の割合でいるかにかかっている。
「図解力」は「考える社員」を育てるための、日本生まれの新しいキーワードである。