山本七平賞--白洲次郎と西条八十

今年の山本七平賞は、「白洲次郎 占領を背負った男」が受賞した。これと最後まで争い甲乙付けがたかったのは「西条八十」であり、こちらは特別賞を受賞した。今回はずれも人物評伝が受賞した。受賞作は300万円、特別賞は30万円。選考委員は、加藤寛中西輝政山折哲雄、養老猛、渡部昇一江口克彦といった面々。


山本七平賞は、PHP研究所が主催する山本七平を記念する学術賞である。1992年から始動。日本語で執筆され日本国内で出版された社会学、政治学、経済学、歴史学、哲学、宗教学、比較文化等の人文科学、社会科学の学術書、論文が対象となっている。


山本七平は、70〜80年代に活躍した評論家で、「日本人論」を語るとき、今も各方面に大きな影響を与えている。

《日本軍》

 『私の中の日本軍』『ある異常体験者の偏見』『一下級将校の見た帝国陸軍』『洪思翊中将の処刑』など

《日本人論》

『「空気」の研究』『「あたりまえ」の研究』『日本人とアメリカ人』『日本教社会学』『存亡の条件』など

《日本思想史》

『勤勉の哲学』『受容と排除の軌跡』『日本資本主義の精神』『現人神の創作者たち』『日本的革命の哲学』『近代の創造』『日本人とは何か』『江戸時代の先覚者たち』など

《歴央》

徳川家康』『乱世の帝王学山本七平武田信玄』『昭和天皇の研究』など

《聖書》

『聖書の旅』『聖書の常識』『山本七平旧約聖書物語』『一つの教訓・ユダヤの興亡』『禁忌の聖書学』『宗教からの呼びかけ』など

《中国古典》『論語の読み方』『帝王学貞観政要]の読み方』など

《自伝・その他》『静かなる細き声』『小林秀雄の流儀』『昭和東京ものがたり』など

《ベンダサン名作品》

日本人とユダヤ人』『日本教について』『にっぽんの商人』『日本教徒』

自筆は60冊以上、その他の、共著、対談、翻訳なども多数。



白洲次郎」の著者である北康利氏は銀行系証券会社勤務の人で資産証券化などのファイナンス理論が専門だが、一方で白州次郎の故郷・兵庫県三田市郷土史家でもある。

西条八十」の著者は筒井清忠氏で、帝京大学文学部教授の日本文化論の大家である。


白洲次郎

 第二次世界大戦にあたっては、参戦当初より日本の敗戦を見抜き鶴川に移住、農業に従事する。戦後、吉田茂首相に請われてGHQとの折衝にあたるが、GHQ側の印象は「従順ならざる唯一の日本人」。高官にケンブリッジ仕込みの英語をほめられると、返す刀で「あなたの英語も、もう少し勉強なされば一流になれますよ」とやりこめた。その人となりを神戸一中の同級・今日出海は「野人」と評している。日本国憲法の成立に深くかかわり、政界入りを求める声も強かったが、生涯在野を貫き、いくつもの会社の経営に携わる。

晩年までポルシェを乗り回し、軽井沢ゴルフ倶楽部理事長を務めた。「自分の信じた『原則(プリンシプル)』には忠実」で「まことにプリンシプル、プリンシプルと毎日うるさいことであった」と正子夫人。遺言は「葬式無用、戒名不用」。まさに自分の信条(プリンシプル)を貫いた83年だった。


西条八十

 1892〜1970。詩人。東京牛込に生まれる。早稲田中学に学び吉江喬松の影響を受ける。早大在学中、詩誌「聖盃」に参加。早大英文科で教鞭をとる。アイルランド詩人やフランス象徴主義詩人に深く傾倒した。『砂金』などの詩集のほか童謡、流行歌も作った。


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