体と五感を磨く徒歩通勤の誘惑

暖かくなってきたので、一年ぶりに歩いて大学に通ってみようと思いたって実行してみた。底の厚い黒靴を履いて家を出る。愛犬チョコラの散歩を兼ねて家内と話をしながら歩いていく。


家から円形の紫山公園を辿りながら少し歩いて右折すると一直線の道路に出る。この道は新緑で彩られたゆりの木の並木が続く。もうすぐ白いつつじの花が咲き誇る季節だ。白い花が咲きこぼれるといった表現がぴったりする、絵に描きたくなるような風景になって、毎年春の通勤が楽しみな道である。7−8分ほど歩くと仙台白百合学園の前に出る。ここで家内と愛犬は回れ右をして家に戻る。犬にお別れをして左に曲がると、県立図書館が正面に現われる。この図書館は全国6位の規模の大図書館で空港ビルのように横に長い銀色の姿をしていて美しい。


この図書館の敷地内から登れる小山があり、ここに小さな道がついている。今日はこの道を登ることにした。今朝ほど若干雨が降ったため少し山道が濡れている。途中に二箇所「この道は自然道です。蛇や蜂に気をつけてください」という看板が出ている。美しい新緑の山道を汗を少しかきながら登っていく。そしてもう少しで登りきるところに別れ道があり、「本部棟」という道しるべがある。それに沿って歩いて行くと宮城大学本部棟の4階へ続く陸橋に出た。宮城大学と県立図書館はこの小山の道を通じてつながっているから、県立図書館も大学の敷地内にあるのと同じである。下の駐車場を見ながら歩いていくと、今年卒業したデザインの学生が一人でテラスで休んでいた。山の中から突然現われた私に驚いて「先生、どこから来たんですか?」と聞いてきた。事情を説明した後、君は結局どうなったのか、と聞くと大学院浪人で授業のアシスタントをやらせてもらっています、とのことだった。「君は進学の意志が固いから大丈夫だろう。頑張って」と声をかけて、棟内に入っていく。私の研究室は4階なので、そのまま歩いていくと着く。


自宅から2大学まで2千5百歩くらいだろうか。25分の徒歩通勤である。山道でもあり少し汗をかく程度なのがちょうどよい加減で気持ちがいい。研究室について冷たい飲み物を飲み、仕事にとりかかる。朝、時間に余裕のある日は歩いて通勤してみようと改めて思った。