劇団わらび座ミュージカル「棟方志功 炎じゃわめぐ」 仙台公演

秋田県田沢湖芸術村に本拠を構える劇団わらび座のミュージカル公演を観るのは今回で3度目である。仙台のイズミティでの「アテルイ」、秋田のわらび座の劇場で見た「宮沢賢治」、そして今回の「棟方志功」だ。わらび座のテーマは常に東北を意識していて、ミュージカルとしての質の高さもあり、私はファンになった。


棟方志功については、青森の記念館の2度の訪問、県美術館で行われた展覧会にも行っているが、毎回何かしら発見があり、志功像が膨らんでいくのが楽しみとなっている。

因みに、73歳で逝った志功の墓碑はゴッホと同じ形に作られている。


棟方志功を演じたのは安達和平。わらび座生まれのわらび座育ちの看板俳優。「アテルイ」でも主役を演じたのを観た。妻・チヤを演じたのは秋田県出身の阿部佐和子。達者な演技だったが、どこかで見た記憶があると思ったら、「一人芝居」で観たことがある女優だった。

この作品は志功がチヤの愛情に支えられて世界のムナカタになる過程を描いた夫婦の物語である。

舞台となった県民会館は、7割がた埋まっていた。劇団四季のあたりでは仙台でもロングラン公演も満席続きだが、わらび座ももっとファンがついてもいいと思う。


ねぶたの囃子と、成功した志功のニューヨークで公演での挨拶のシーンから始まる。


 腕や技術よりも、心や魂が大切だ

 他力

 神や仏が助けてくれる

 魂が武者震いする

 私は私ではない

 命のある限り絵を描こう

 わだばゴッホになる

 ゴッホの作品の中に日本の浮世絵の影響があった。それは広重の版画だ。


「大和美し」から始まった運命の出会いである柳宗悦との邂逅シーンも良かった。「人は人によって人となる」(斉藤実)という言葉を連想した。この柳宗悦という名前も日本近代の人物を訪ねているときによく出会う。白州正子の師でもある日本民芸の紹介者。この人物のことも調べる必要がありそうだ。



「腕や技術よりも、心や魂が大切だ」は、日本画横山大観たたら製鉄村下(むらげ)の木原明さんと通じる考え方だ。