隅田川下り、浜離宮、江戸東京博物館、浅草演芸ホール

浅草の吾妻橋から隅田川ラインと呼ばれるコースで隅田川を下る。

吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋、両国橋、新大橋、清洲橋、隅田川大橋、永代橋中央大橋、佃大橋、勝鬨橋と続く、形の変化と色の多彩さを堪能する。後藤新平が震災復興の目玉のひとつにあげたように「隅田川を橋の博物館にする」という構想が実現していると感じた。大川端リバーシティの高層マンション群、読売新聞など有名企業のビル群、聖路加タワーなど隅田川から両脇の東京の各地を眺めるのも興味が尽きない。


汐留に近い浜離宮に到着。浜離宮徳川将軍家の庭園で「浜御殿」と呼ばれていたが、明治維新後は皇室の離宮となり、「浜離宮」と名前を変えている。海水を引き入れた潮入りの池と2つの鴨場がある。この庭園の緑を背景に汐留の超高層ビル群の眺めは現代の日本を象徴している。


両国の江戸東京博物館で開催されている「江戸の誘惑」は、ボストン美術館所蔵の肉筆浮世絵展である。版画ではなく、注文に応じて描いた一点だけの作品である。ビゲローコレクションと呼ばれる5万5千点の浮世絵版画と700点の肉筆浮世絵コレクションのうち、80点の肉筆浮世絵が海を渡ってきた。葛飾北斎、勝川春草、宮川長春、鈴木春信、歌川豊春、北尾重政、鳥居清長などの浮世絵が一挙に公開されていて目を楽しませてくれる。

このコレクションをボストン美術館に寄贈したウイリアム・ビゲロー(1850−1926年)は、ハーバード大で医学を学び、パリでパスツールに学ぶ。1881年にモースの講義を聞き、日本に滞在し、フェノロサと知り合う。モース、フェノロサ岡倉天心とビゲローの並ぶ写真があった。1996年にこのコレクションの日本からの調査団が編成される。今回の開催はその成果の披露でもある。

「江戸の四季」。「浮世の華」。「歌舞礼賛」。「古典への憧れ」と整理された浮世絵は素晴らしい。豊かな江戸の生活風俗が目に浮かぶようだ。日本人のコレクションでないのが残念だが、系統的に蒐集し保存してくれたアメリカ人のビゲローに感謝しなければならないかもしれないと思いなおす。


浅草寺でおまいりをしたあと、浅草演芸ホールで落語に興ずる。

春風亭一朝、古今亭志ん五、そして真打は林家正雀の「鰍沢」だった。


二泊三日の東京下町紀行を堪能した。