秘書学入門

昨日から丸一年一緒に仕事をしてきた秘書が一ヶ月ほど休むことになった。

その間、大学院で学ぶ女性の中国人留学生が4日間(午前中が中心)、宮城大学卒業生で主婦をしている韓国人留学生が1日、というスケジュールで補佐をしてくれる。研究室はしばらく日中韓の共同体となる。


私の研究室は仕事のスピードが速く、対外的な折衝もあるため、秘書も微妙な判断を日常的にしなければならないことが多い。このため、ボスである私と秘書の息の合い方、コミュニケーションのとり方が仕事の質と量に大いに影響する。


こういう阿吽(あうん)の呼吸ができるようになるまでには、時間と互いの労力、そして失敗の歴史が必要である。どのような案件にもベストな対応というものがある。いつもどうするのが一番良いか、良かったか、そしてなぜうまくいかなかったか、その原因は何か、ということを考え、話し合うようにしている。毎日起こる失敗事例の研究と教訓、そこから得られる細かな改善の積み重ねを習慣にしなければならない。


また自分のやっていることの一つひとつについての把握と分析もできていなくては、秘書に渡す部分を確定できない。そしてその作業や仕事の持つ意味や影響などについて情報を共有する必要もある。秘書の理解の程度が甘ければずれた資料をつくったり、さがすことになってしまう。秘書を雇ったがなかなかうまくいかないというのは、ボス自身が自分のやっていることについて本当はわかっていないということになる。


究極の目標は、秘書の判断が私の判断と同じになることである。日常的な判断をそつなくやってもらえることである。そうすると物事が極めてスムースに進むことになる。だから、秘書を雇った人の最大の仕事は、毎日の教育ということになる。日常の中でのちょとした事件に遭遇したときはチャンスなので、そのことを題材に話し合うことが大事だ。この日常の教育で考え方が統一されていく。これは一緒に階段を一段一段昇っていくという感覚だ。しだいに一体感が高まっていく。

この過程で仕事の部分もしだいにまかせられるようになってくる。これはななかなか面倒なことだが、おろそかにすると自分でやった方が速く確実だということになって、いつまでたってもちっとも楽にならない。ボスの側にも長い目と根気が必要である。


作業と仕事のある部分は秘書がしてくれて、ボスは自分にしかできない仕事にできるだけ時間を多く割くような構えを常に整えていく、磨いていくことが大切である。


ここ一ヶ月、どのような事件が起こるだろうか?