「小泉官邸秘録」(飯島勲・日本経済新聞社)

5年5ヶ月という歴史的な長期政権だった小泉政権の首席総理秘書官の回顧録である。

常に総理の近くにいて一心同体で政権運営にあたっていた姿と自負が垣間見える。


「政権の形を作る」の章では基本哲学、経済諮問会議、特命担当大臣、官僚人事の掌握、官邸スタッフの強化、メディア戦略、官邸外交などの項目が並んでおり、小泉政権の形作りが内部から語られる。政権の骨格はチーム小泉の形成から始まった。「総論でタガをはめ、大臣を押さえ、官僚組織のトップを押さえることで各論での「骨抜き」「逃げ」を許さない」やり方で政策を推進していく。


ハンセン病訴訟問題、骨太の方針2001、予算編成の歳時記の変更、最初の試金石・道路公団改革民営化、三方一両損医療制度改革、BSE事件、田中真紀子外相更迭、9・11同時多発テロ有事法制北朝鮮訪問、年金改革、郵政民営化シフト、民営化法案を巡る攻防、参院秘訣と衆院解散と大勝利、三位一体改革市町村合併行政改革推進法、歳出入一体改革、8月15日靖国神社参拝。


この間の小泉総理の決断と判断、それを示す言葉が紹介されている。取り組むべきテーマと目標を決めたら迷わずに真っすぐに進み、決してぶれない人物として描かれている。直近の5年間だからそのときどきの状況や関係する人々の言葉や行動も読者は覚えているので、説得力がある。議論の主導権は総理が常に握っていたことがわかる。

「一度決めたら決してぶれない。最後までやり抜く。決断は大胆に、行動は細心に。

 まさにそれが小泉流なのである。」

「総理は一貫して「国民にとって分りやすくなければならない」と主張していた。」

「年明けから寒波・雪害対策を始めたいという役人を一喝して御用納めの12月28日に

 政府・与党の対策をスタートさせた。」



首席総理秘書官という立場の筆者は、抑制的な語り口で私情を挟むことなく政権の姿を淡々と描いている。この間の敵であった自民党や野党の政治家などについての論評も控え自制して書いている。1972年の小泉初当選以来秘書をつとめた筆者については在任中悪意に満ちた報道もあったが、この本での肉声を聞くとやはり憂国の士であるという印象を受けた。

やはり現場からの報告は掛け値なしに面白い。


いずれ「小泉純一郎回顧録」という本人の口から語る政権運営とその折々の心情を記した本を読みたいものだが、当面はこの本や竹中大臣などの回顧録を読みながら、この政権の総括をしたいと思う。


小泉語録

・痛みを恐れず、既得権の壁にひるまず、過去の経験にとらわれない

・切られるところは反発するぞ。でもその方がいいんだだ、反発がある方がわかりやすい。

・総論をしっかりしてくれ。総論がきちんと決まってくれば各論は押さえられる。

・各省には「対案を出せ」と言え。反対ではなく対案だ。

特殊法人改革は言ってみれば政府の不良債権なんだ。

・自分はトップダウンではない。国民の支持のボトムアップだ。

自民党公明党が国民の審判によって過半数の議席を獲得することができなかったら、

 私は退陣します。