「迷ったら、失敗する可能性が高い方、自分がダメになる方を選べ。そうするとエネルギーが湧いてくる」(岡本太郎)

私たちは日常生活では常に選択に迫られている。

どちらのプランを採択するか、どんな戦略で行くか、赤いシャツを買うかグレーのシャツにするか、誰を食事に誘うか、状況や重要度に差はあるものの、様々な場面で決断をしなくてはいけない。

その時にすぐに判断を下せない人が案外多い。時には何事も決断できず、決断しても満足行く結果が得られないと、結局「失敗した」「損をした」と後悔ばかりする。

そのような人が、非常に難しい問題でも早く決断できるようになる方法がある。

どちらでもいい。そう信じることだ。

自分が選んだ方が正解なのである。


私も大学時代、何事においてもどちらがいいか選べない時期があった。自分の出す決断に自信が持てなかったのである。しかし、岡本太郎の『原色の呪文』という本を読んで衝撃を受け、それから、どのような状況でも早く判断ができるようになった。

私が影響を受けたのはその本の中の、「迷ったら、失敗する可能性が高い方、自分がダメになる方を選べ。そうするとエネルギーが湧いてくる」という言葉だった。

実際は、それをそのまま受け止めたわけではなく、常に苦しい方を選ぼうとは思わなかったが、私が迷う原因は、成功しそうな方、得をするであろうという方を選ぼうとすることだと気がついた。


よく考えてみれば、成功しそうな方を選んでも失敗するかもしれないし、苦しい方を選んでも結果的にうまく行くかもしれない。

つまり、どちらを選んでも、その後の自分の行動や心掛け次第で結果は変わるのだ。それならば、決断を下す時点で重要なことは、どちらかをとにかくはやく選ぶことだけなのだ。

それからは、「迷ったら、どちらを選んでもいいのだ」と思えるようになった。

どちらでもいいと思うと、早く決断できる。決断が早いと悩んでいる時間が少ないので、気分が楽になる。

楽に考えることが習慣になると、どちらを選ぶかというような苦しい判断をする場合でも、あまり悩まなくても選ぶことができるようになった。就職先を選ぶ時でも、真剣にどちらがいいかを悩んでも誰が考えても正解だという答えはでてこない。不確実を承知でどちらかを選ぶという決心で前途を切り拓こうという気概が生れてくるのだ。


また、どちらかを選ぶという選択肢ではなく、「どちらも」という選択肢もある。あまり早めに決めることは避けて、ある期間同時並行でやっていくと、自然に決まってくるということもある。自然な流れの中で進むべき方向が見えてくるのだ。曖昧さをかかえたままで、ある期間過ごすということも必要なのである。