連載「団塊坊ちゃん青春記」3---探検部入部1

探検部というクラブを読者はご存知だろうか。

このクラブに似たものに、ワンダーフォーゲル部(ワンゲル部)と山岳部という伝統のあるクラブがあります。ワンダーフォーゲルとはドイツ語で、渡り鳥という意味です。ヨーロッパの山々を若い青年たちが足で歩きキャンプをし、自然に触れ、健かに生活することをめざした活動が日本に輸入されて、今やほとんどの大学にワンダーフォーゲル部というクラブが実在しています。危険を冒すのではなくて、山々を楽しくハイキングし、キャンプでは、抒情性の高い山の唄を皆で唄うというのが平均的な姿のようです。


私は一時このクラブに在籍しており、夏の北アルプスに出かけたことがあります。北アルプスの雄・槍ケ岳の手前の大きな雪斜面を上から降りてくる時でした。ある東京の私大のパーティが逆に長い雪斜面を列をなして登ってくるのをみかけました。一人の新入生らしい男が、もう一歩も登れないという表情で下を向いてつっ立ったきりになってしまうと、前後から上級生の罵声がとびます。さらに冷たい雪をまるめてぶつけたりもしています。何と恐ろしい光景かとつぶやくと、ワンゲルの上級生が、「お前らよかったなあ。うちはああいうことはないゾ。」といいました。下界に降りたあと、新聞をみると、何人かの新人が上級生のしごきで死んでいました。イヤハヤ恐ろしいことでした。という様に比較的ゆるやかな山登りをするのがワンゲルと言って良いでしよう。


さて長い伝統を誇る山男集団の山岳部は、いわずと知れた山登りのプロたちです。彼等はロッククライミングもやりますし、冬山なども積極的に出かけます。私の高校以来の友人であるU君は、ある大学の山岳部に在籍しており二人でよく山の話をしました。二人で一緒に山登りに行ったこともあります。この彼も大学在籍中に山をやめてしまいました。あるロッククライミングで、彼は三番目にいたそうです。一番目と二番目がザイルをつないでいました。トップの男が足をすべらせ転落したそうです。ザイルをしっかり持ってそれをとめようとした二番目は、ささえきれずに、彼の眼の前で空中にポーンと飛びだしてしまったのだそうです。そして二人とも死んでしまいました。U君は、二人を山で焼きながら泣けてしかたなかったのだそうです。それ以来、彼は長年の両親の懇願を容れて山をやめることにしたのだそうです。これが山岳部の一面です。

          (明日に続く)