書籍の新聞広告はどのくらい効いているのだろうか?

書籍の新聞広告はどのくらい効いているのか。

これは結局、出版社の売り上げで判断するほかはないのだが、

ある指標を使える気もしている。

それは、ネット書店での反応をみるという方法だ。

アマゾンでは、数時間置きに売り上げのランキングを表示するというサービスがある。

新聞広告が出てから、ここを眺めていると雰囲気はわかる。


新著「残業はするな、前業をせよ!」(大和書房)の場合は、

14日(土)に中日新聞、16日(月)に朝日新聞、17日(火)に読売新聞に割合と大きな広告が出た。

影響を観察してみたが、アマゾンの順位では、中日新聞は少し動いて、朝日新聞はまあま動いて、読売新聞では大きく動いている。

今回のテーマは読売新聞の読者に届いた、という印象を持った。

朝日新聞と読売新聞の読者層は違うということなのだろうか。


ネット書店ではその日に反応が起こり、それが書店での売り上げとして数日後に反映してくる。その数字を出版社が入手するのは実際のところかなり遅れるようだ。

新宿紀伊国屋での売り上げを見て、次に打つ手を考えているという出版社もある。

出版社に聞くと、実際にはネット書店の売り上げはまだまだ微々たるものだそうだが、

ネット書店での反応は先行指標としては使えると思う。



また本に対する評価については、著者自身に直接届く情報は極めて少ない。

本を書き始めた時代から長い間、読者の反応は売り上げの数字と数ヵ月後に出版社からもらう読者カードだけだったが、インターネットの登場によって様変わりした。

最近はネット書店での読者の投稿書評を参考にしてきたのだが、

今はこれに加えて、読んだ人が書いているブログに注目している。

様々な人が、本の是非を論じている。著者自身が読んでいるとは思っていないから、影響を受けたとあったり、当たり前のことを書いているだけだと批判していたり、正直な感想が書き込まれており、とても参考になる。時どきは、嬉しくなってコメントを書き込んだりもしてみている。


江藤淳(1933ー1999年)という大物の文藝評論家がいた。この人の本は評価も高く読者も多いのだが、何十年作家家業をやっていても、自分の本を読者が読んでいる姿を見たことがなかったそうだ。ところが、山手線に乗って座ったら向い側の紳士が自分の最新刊(山本権兵衛を描いた「海は甦る」だったか)を熱心に読んでいる姿をみた。江藤は驚き、またその姿と表情ををじっと感動を持って眺め続けたとのことである。勇気がなくて「その本の著者の江藤淳です」と声をかけることができなかたことを悔やんでいる。

若い頃、文藝春秋だったと思うが、そういうエッセイを面白く読んだことがある。


私も同じような経験をしたことがある。仙台のジュンク堂という大きな書店で本を探していたところ、若い女性が私の出した新しい本を手にとって眺めている姿に遭遇したことを思い出した。驚いて観察しているとその人は買うつもりでレジに向かおうとした。私はとっさに「あのう、その本を買いますか。わたし、著者の久恒です、、、」と声をかけたら、「今は仙台にいらっしゃるんでしたね」と驚きの声をあげた。少し会話をしたが、嬉しく恥ずかしく、そして幸福な思いがしたことを思い出した。



最近は、著者と読者の距離が随分と近くなったものである。