当時の探検部には部室がありません。先輩の下宿を部室がわりに使っていたのです。一年間の活動費として学友会から支給される予算がたったの八千円から一万円にあげる交渉が難事でした。学友会の予算担当者とえんえん四時間話しこんでUPしてもらったのでした。さて今度は根城となる部室を確保することにしました。
と言ってもオンボロのクラブの部室の集っている長屋には一つも空きがありません。そこで知恵をしぼって考えたのが、すでに部室を持っている既存のクラブの部室を奪うという計画です。まずあまり活動をしていないところで考え方が右寄りのクラブをさがすことにしました。調べると「俳句部」というクラブがこれに該当することがわかりました。
クラブの部員で、全共闘のメンバーをしていたGという男に、「俳句部は右翼的であり、けしからん。彼等に部室をあずけておくことは大学のためによくない。」というデッチあげの理論をつくり、構内の実力者闘争家に根まわしをしたのです。早速、全共闘名で、俳句部追放の紙をはりだしました。俳句部の罪状をならべたてたあと、「何月何日までに部室を空け渡せ、空け渡さなければ実力で追放する。後は探検部が使用する」という文言を並べました。
その当日、私達探検部員は、赤いヘルメットをかぶって俳句部に突入です。部屋の中には一人、浮世離れした俳句部の学生がいました。彼等の方でも泣く子と全共闘には勝てぬと退散してしまいました。「エイ、エイ、オー」とみんなで勝ドキをあげました。さて、部屋の中をみると、大きな金庫があります。しかしカギがありません。しかし大丈夫、探検部にはどんな男でもいるのです。ダイヤル式の複雑な暗号を解いてしまう先輩もいるのです。中味は何にもありませんでしたが、何はともあれ、今後の飛躍のための一里塚を築いたわけです。
今から考えると、全く無法なふるまいでしたが、当時は半分位は真剣にこのプロジェクトをすすめていたようです。俳句部の皆さん、ゴメンナサイ。