連載「団塊坊ちゃん青春記」11話---前人未到の鍾乳洞に達す1

探検部活動の一つの分野に鐘乳洞探検があります。


このケイビング活動の練習場として私達は北九州にある岩屋(ごうや)鐘乳洞をよく利用していました。この岩屋には長く続く横穴や数十メートル地下に下がるたて穴や、“カニの横バイ”と我々が名付けていた狭い通路を持つ鐘乳洞などがあり、遠征のための訓練に非常に適しています。鐘乳洞にもぐる時の服装はと言うと、自動車整備工の制服ともいうべき“つなぎ”とキャラバンシューズ、ヘルメットとランプといった具合で、炭鉱夫と同じです。


鐘乳洞になぜもぐるのか。山の場合には、「そこに山があるから」という美しい台詞があり、又、「頂上から見る美しい景色がそれまでのつらさを忘れさせる」あるいは「重い荷物を背負って遠い道を行くのは人生と同じである」という教訓派と様々であり、まあどれももっともらしく聞こえます。


ところが鐘乳洞だけは理由がみつかりません。地中にずんずんもぐっていくと地の底に落ち込んでしまったような心細い気持になります。又、狭い穴を必死で通過する時など「今ここで地震が起きたら一巻の終りだな」と考えたり、さらに悪いことに鐘乳洞には水が流れていることもあり、泥だらけになってしまい、良い事は全くありません。


“つなぎ”も岩にひかかって破れたり、ヘルメットが岩にぶちあたったり、又ヘルメットにつけたライトが接触不良でつかなくなることもしばしばです。気の遠くなるような暗闇の中でライトがつかず、しかも仲間がすぐそばに居ない時など気の小さい人なら発狂するところです。鐘乳洞は地中にあいた穴ですから体が通れなくなればそこで、終りとなります。


岩屋に20メートル位垂直に下がった深いたて穴があり、その底から今度は横に穴がのびています。この穴にはロープを体にまいて仲間に入口で支えてもらいながら降りるのです。ある時部員五人でこの穴にもぐりました。この横穴を進んでしばらく行くと行きどまりです。もうこれ以上進まなくてもすむため内心ホッとしてひき返そうとした時、先頭にいたリーダーのYという男が「オーイ、小さな穴があいとるぞー」とわめいています。


よくみると直経7〜8cmほどの小さな穴があいており、顔を精一杯近づけるとその穴の先に何やら空間らしきものがのぞけます。通常、「ヘルメットが通れば体は通る」というのがこの鐘乳洞探検の一つの公式なのですが、この小さな穴はとても無理。ところがこのリーダーがとんでもないことを思いつきました。「ヨシ、みんなでこの穴をほろう」これ以後一年近くにわたって私達は非常に辛い仕事をするはめになりました。(明日へ続く、、、、)