連載「団塊坊ちゃん青春記」第25話---ライトなしの深夜のドライブ 

ある日、友人達と映画をみに出かけました。終って家に帰ろうとすると、どうしたことでしょう。ライトがつきません。友人達はライトなしでは、運転もできないし、又、他の車から追突を受ける恐れもあるので、置いて帰った方が無難であると口々にアドバイスをしてくれます。

私もそう思ったのですが「いっちょう、ライトなしで運転してみるか」と考えました。友人の車を私の車の後につけさせ、前を照らすライトだけでなく、後方灯もつかない私の車を、他車からの追突からまもろうとする算段です。しばらく走ると、来るわ、来るわ、ある人は車で、ある人はバイクで運転席に近づいてきて、「ライトがついていないゾオ」とどなって注意をうながします。「うるさい!わかっとる」とも言えず、不幸中の幸いでしょうか、作動しているビームアップ機能を活用し追い払います。

つまり、うるさいおせっかいが近づいてくると、ハンドルをにぎりながら、ビームアップを作動します。ただ、この作業は長い時間は無理なので、ほんのしばらくの間、「おお、忘れてた」てという顔をして作動するとだまされて離れていきます。友人の車と私の車の間に他の車が何も知らずに割りこんでくると一大事。割り込んできた車は、私の存在がわかっていないはずですから、私はおっかなびっくりです。運転席の横に座って前後左右の様子を知らせてくれている友人が「あ、あぶない!後から近づいてきた」と叫ぶと、私はとっさにブレーキを踏みます。なぜかと言うと、ブレーキを踏むと、どういう訳か、ブレーキランプがつくんです。赤いブレーキランブが点滅すると後続車は、我が車の存在に気づき、危険を察知してスピードをゆるめます。しかし、これらが全部一ぺんに起る時もあり、それはもう大変です。

となりに座っている友人は、恥ずかしさのあまり、外からみられないように姿勢を低くしてしまう始末。アクセルを踏みながら、すぐ横にまでやってきてうるさく注意する奴をだますために、右手でビームをアップし、後から追突するかもしれぬ後続車に注意を促すためにブレーキを軽く踏む、こういう具合です。私の全身の五感と全能力をフル活用。格闘すること数十分。

やっと、わが家がみえた時は、安堵のあまり、赤信号を突っ走ってしまいました。