美術の世界では、日展、帝展、二科展、官展、文展など、様々の大型美術展の名前があり、その関係がわからないでずっときた。美術に関してはまったく関心はなかったし、絵も下手だったこともあって、あまり触れることはなかったのだが、最近、人物記念館の旅を続けていると、個人の名前を冠した美術館にあたることが多くなってきた。いい絵を観る機会が増えて少し興味が湧いてきた段階である。美術館では、先に述べた展覧会の名前が出てきて、美術展の系譜や位置関係がよくわからなかったので、仙台で開催中の「日展の100年」を観てきた。
美術の歴史は画家、彫刻家、工芸家、書家などの旧派・新派などの流派の抗争の歴史である。生死をかけた戦いの中で、公的な美術展覧会の歴史が刻まれてきたのである。
政府主導の展覧会として1907年に発足した文部省美術展覧会(文展)は、1919年から1934年の帝国美術院美術展覧会(帝展)、1936年から1944年の新文展、1946年からの日展と名称や組織の形態を変えながら、政府主導の官展の形態を保持し日本を代表とする総合美術展として発展してきたが、現在では社団法人日展が主催する民間の美術展となっている。
日本画。西洋画・彫刻の3部門で始まった文展は、現在では日本画・洋画・彫刻・工芸・書の5部門になっている。
「日展100年」は、文展から始まったこの100年の美術界の代表作を集めた展覧会で、東京、仙台、広島富山の全国4会場で開催されるが9月23日から11月4日まで開かれている。
展覧会会場で観た美術と会場で購入した「日展100年」という書物で、印象に残った作品を挙げてみたい。
1.文展時代
下村観山:木の間の秋
小林古径:闘草
上村松園:花がたみ
橋本関雪:南国
中村不折:白頭翁
中沢弘光:夏
和田三造:南風
満谷国四郎:車夫の家族
吉田博:雲表
黒田清輝:夏草
石井柏亭:滞船
彫刻部門
新海太郎:ゆあみ
朝倉文夫:墓守
米原雲海:旅人
荻原守衛:女
2.帝展覧時代
石崎光よう:燦雨
中村大三郎:燈籠大臣
山口蓬春:三熊野の那智の御山
鏑木清方:三遊亭円朝像
松岡映丘:右大臣実朝
結城素明:炭窯
牧野虎雄:中庭(庭の少女)
岸田劉生:童女像
永瀬義郎:髪
中野和高:風景を配せる我家庭
伊原宇三郎:二人
彫刻部門
北村四海:凡てを委ねる
澤田政廣:白鳳
3.新文展
鏑木清方:一葉
竹内栖鳳:若き家鴨
横山大観:皇大神宮図
安田ゆき彦:十二月八日の山本五十六元帥
梅原龍三郎:紫禁城
彫刻部門
棟方志功:勝曼譜
石井鶴三:相撲
4.日展
横山大観:漁夫
伊藤深水:聞香
中村岳陵:残照
寺島紫明:舞妓
東山魁夷:秋えい
杉山寧:きゅう
寺内萬治郎:裸婦
中村琢二:赤いブラウス
田崎広助:朝やけの大山
小山敬三:浅間山夕月
彫刻部門
えん鍔勝三:星羅
工芸部門
飯塚ろうかんさい:花かご富貴
六代清水六兵衛:秋叢花瓶
書部門
川村麒山:酔古堂剣掃語
上条信山:谷神不死
廣津雲仙:禅語