連載「団塊坊ちゃん青春記」第27話--電話料金を払わないと…

19世紀の後半、有名なべルの手になって完成した電話は、電流による音の伝達という方法によって発明されたもので、いわゆる技術革命の一つの結晶ともいうべきものです。それ以前の世界においては、人はお互いの意思を確認するために、長い時間をかけて直接に会うか、あるいは手紙に託すしか方法はありませんでした。ほんの百年前に発明されたこの機械は極めて便利なもので、今日では、私たちは日本の国内はもとより、外国とでもダイヤルをまわすだけで、話ができるという夢のような時代に入っています。

ところで、独身の一人住まいとは、一言で書くと、何事も面倒くさいという精神が基本に流れていますので、使う時は、文明の利器の有難さを満喫しているにもかかわらず、その正当な代償である料金を支払う段になると、とたんに、メンドウになってしまいます。
「面倒な事なんてないワヨ。銀行の自動振替を利用すれば良いのヨオ。」と世の奥様方はおっしゃるにちがいないのですが、それは私に言わせれば、独身の男というものの実体をご存知ないからなのであります。

電話局から、前月分の電話料金の請求書がくる。いつ払おうかなあと思いながら、いつしか世の雑用にまぎれて忘却してしまう。こういうことが何回か続くと、ある日突然どこからも電話がかからなくなります。電話というのは、使える時はまことに便利なものですが、ないとなると、別に生活ができないというものでもありません。
日本でも何度か、電話をとめられたことはありますが、事はイギリスでも同様であります。ところがまずいことに、料金の請求は、英語です。払わないと、何度か請求書らしきものが来るのですが、日本語による「お願い」「督促」「脅迫」というのは、何となくニュアンスがわかるものですが、英語というのは、大体のことはわかるつもりですが、あまり説得力がないものです。

しかしさすがは、イギリスの電話局です。
三回目か四回目の請求書は、なんと、赤い字で来るんです。多分、これが最後通告だゾという意味でしょう。ほおっておくと、数日後、突然電話が止まります。
日英比較では、イギリスが、赤い文字で最後通告がくるということが違うだけでした。電気料金、奨学金返済金、税金と、色々なものを……悪気はなくて、ただメンドーなだけなのですが……払ってこなかった私ですが、今まで一番こたえた制裁は次のケースでありました。(次回)