空海の全体知


彼がその世界観・宇宙観を示そうとしたものが、金剛界曼荼羅胎蔵界曼荼羅という二つの曼荼羅であるとすれば、それぞれが時間と空間の二つの相を描き出して全体性の中で自らを位置づけようとする世界表現である。この表現、よく考えれば、現在流行の「図解の技術」であり「可視化」である。曼荼羅の前に立ち、深呼吸して中心にある大日如来と自らを一体化させる意識の中で、生きる力と可能性を躍動させる仕掛けは感動的でさえある。

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文章中の「彼」とは「空海」であり、この文章を書いたのは畏友・寺島実郎である。
先日、寺島に会ったとき、「高野山大学夏期講座で講演をした時、曼荼羅を見ながら君を思い出していたよ。これをやっていたのか」と言われた。「よくわかりましたね」と返事をしておいたが、それがこういう形で文章になっていた。