「教養立国ニッポン」(藤原正彦)

大切な提言であると思うので、要点を私なりに整理して書き留めておく。

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2005年11月にでた「国家の品格」がベストセラーになった藤原正彦
文芸春秋12月号に「教養立国ニッポン」という論文を書いている。
サブタイトルは「経済至上主義では人心乱れて国滅ぶ。再生の道はひとつしかない」
とあり、救国の提言として教養立国を論じている。

格差社会の本質は、国民の大多数が属すべき、勝者でも敗者でもない中間層が
薄くなりつつあることである。中流が壊されて下流へ向かっているという
ことであろう。社会から中流をなくしてしまうような経済学は、どのような
美しい論理でかざっていようと誤りである。」と喝破した藤原は、
構造改革がもたらした問題を、経済至上主義の蔓延と日本人の祖国に対する誇りの
喪失と説明している。「たかが経済」と考え、誇りを取り戻そうと主張する。

その妙手が「教養主義」の復活であるという。
そして文化、芸術、学問などの総体としての
教養というものの大切さを5つ挙げている。
1.教養は大局観や長期的視野を育てる。
   今や第一権力となったテレビの言うことをそのまま信じるようになったのは
   国民の教養の不足が主たる原因である。
2.教養は人間的魅力を高める。
   明治の目覚しい成功は明治人の教養を抜きに語ることはできない。
   エリートの教養低下こそが、我が国の迷走の原因である。
3.教養は日本の国柄である。
   日本人の教養水準や文化水準の高さのために日本は植民地にならなかった。
   国民の教養や道徳の高さは国の防衛力とある。
4.教養は充実感と愉悦を与える。
   教養獲得のための主たる手段である読書は時空を越える愉しみでもある。
5.教養は誇りである。
   豊かな経済を得たとしても誇りにはつながらない。
   世界が尊敬するものは、道徳や教養、そしてその国の産んできた文化的遺産などだ。
   その文化遺産に触れることが大事だ。

経済は豊かな社会を実現するためのもので、そこで得られた自由と余暇を文化、芸術、
読書、学問という個人の教養の充実に向けるためのものである。

教養主義の復活が国を救う。

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