映画「母べえ」(かあべえ)



福岡。私にとっては博多といった方がしっくりと馴染む名前だ。
今回の帰省では、母と博多に出かける。

午後、福岡市美術館で行われている「美の求道者・安宅英一の眼 安宅コレクション」を観て、夕刻はキャナルシティのシネマで山田洋二監督の「母べえ」(かあべえ)を楽しみ、その後中州の屋台で天ぷら、焼き鳥、などを食べる。宿泊はホテル日航福岡。


母べえ」(かあべえ)は、1940年(昭和15年9から1941年(昭和16年)にかけての東京郊外のつつましい家庭が舞台。太平洋戦争の始まろうとする時代に翻弄されながら生きる、貧しく暖かい家庭の物語。母親役の主演は吉永小百合

短い生涯だった竹内浩三(1921−1945年)の詩に山田監洋次監督が興味を持って調べていたところ、一緒に仕事をしていた野上照代さんが詳しいことがわかり、「父へのレクイエム」(「母べえ」に改題)という野上書いた本を手渡される。それがきっかけで映画化された。
吉永小百合さんが好演していたが、山田監督は「母べえは違います。考える力を持っていた。つまり、個、自分という考え方を持っていた人です。その意味で吉永小百合さんいふさわしい役でしたね」とパンフレットの中で語っている。

この物語に出てくる二人の姉妹、初べえと照べえは当時10歳前後だったが、私の母と同じ世代だなあと思いながら観たが、終了後パンフで野上照代さんの略歴をみるとまさに1927年(昭和2年)だから母と同じ年だった。
この映画の時代背景は、赤紙言論統制、贅沢品撲滅運動、治安維持法、転向、灯火管制、特高隣組、といった言葉で想像できる。

また、音楽は富田勲先生だった。
「この映画が描いているものは、あのどん底の時代に必死になって家族を守った「母」なんですね。」「ピアノの透明な音によって、その、内なるエネルギーを表現したいと思ったのです」
「夫が政治犯で捕まり、二人の子供を女手一つで育てていかなくてはならなくなったという、あの時代においても更にどん底にあった母親像でした。」
「山田さんの映画作品における音楽の立場とは、風景でいえば山であり、月であり、星であり。一歩離れたところからじっと人間模様をやさしく見つめ続けるような存在である、というのが僕の持論です」

「武士の一分」の時に出ていた、壇れい、坂東三津五郎笹野高史が重要な役割で出演している。壇れいは父べえの妹の野上久子役、キムタク演じる武士の敵役だった三津五郎は今回は学者の野上滋役で吉永小百合演じる母べえの夫、笹野高史は「武士の一分」で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞したが、今回は特高を好演している。