寺島実郎監修リレー講座「「現代世界解析講座」-いま、世界潮流と日

k-hisatune2008-04-17

寺島実郎監修リレー講座「「現代世界解析講座」-いま、世界潮流と日本のあり方を考える」が、いよいよ始まった。
「いま、我々が生きている時代を認識することは、自らの生き方を構想するために不可欠である。しかし、自分が生きている時代を的確に認識することは容易ではない。そのための基本的作業のために企画したのがこのリレー講座である。この人の話を聞くべきであるという人物を厳選し、その人物の専門性に裏づけられた時代認識に耳を傾けることで時代への眼を開いてもらいたい」(寺島)
第一回は、「21世紀に入って7年間の世界潮流の変化について--世界経済、政治の基本構造の変化を知る」という寺島実郎さんの講座である。多摩大学の700人入る会場は、ほぼ満杯となった。今年の経営情報学部新入学生400名、一般社会人280名がこの講座の受講生だ。壇上に近い前方は社会人、後ろの方は学生という配置をとっている。この会場が満杯になるのは入学式と卒業式だけだろうから、この盛況は一つの事件であるともいえる。
私も入っているが、酒井啓子イラク)、沈才彬(中国)、金美徳(朝鮮)、明石康(アジア)、江川詔子(メディア)、浅野史郎(地方)、中谷巌(日本文明)、堀田力小子化)、というラインアップによるリレー講座は、多摩大学20周年記念企画として、書籍にすることにもなっており、講義の始まる前には寺島さんを含む関係者と出版社との会議も行われて、私も出席した。
講義が始まってまず、寺島さんはこの講座の狙いを述べた。一つは新入学生にそれぞれの分野の一流中の一流の講師によってわれわれの生きている時代のダイナミズムを伝えること、もう一つは多摩大学20周年にあたり東京西地区へ向けての社会貢献を果たすことと整理した。物事の本質を考え抜く力を「脳力」(ノウリキ)を養うために、現場感覚からくる印象と統計からみえる数字を結びつけて考えるという方法論を提示し、このやり方で1時間半の講座を通した。以下、キーワードだけをざっと拾ってみた。
大中華権圏(中国・香港・台湾・シンガポール)を中心としたアジアとの日本の貿易構造の一大変化、下部構造(体)はアジアで上部構造(頭)はアメリカであることの混乱、世界港湾ランキングの変化による物流の変化、固定観念視野狭窄症に陥った日本、太平洋側が表日本日本海側が裏日本というのが戦後日本人の固定観念だが21世紀はオモテとウラの反転も、若い人はユーラシア大陸が舞台に、出入国統計にみる人流の変化、人流はアメリカからアジアへ、内陸のアメリカ(健全なアメリカ)を知らない日本、21世紀初頭の7年間でアジア各国通貨に対しての大幅な円安によってアジアからみて日本は物価の安い国になりアジア人がショッピングに来る時代、エネルギーをてこに蘇るロシアは大ロシア主義に回帰、小泉改革(20年遅れのサッチャー革命)の先行モデルとしてのイギリスの25年後の現実、産業のウインブルドン現象、外資による成長力の達成と技術を基盤とした産業力の疲弊、1989年のベルリンの壁崩壊による冷戦後20年の時期に日本の立ち位置を見直す時期、次回(5月29日)はIT革命が日本にもたらしたインパクトを語る予定、、、、。
会場は講義が始まると水を打ったように静かになり、緊張した空気が1時間半続いた。前方の社会人の席に近いところにいたのだが、真剣にうなづきながら聴くひとが多かった。
終了後、舞台裏の控え室で講師を囲み関係者でお茶を飲みながら歓談。
来週の次回の講師は私で、「現代世界のつかまえ方−−−図解思考のすすめ」という大きなタイトルで話をすることになっている。このリレー講座における私の役目は、各講師の発する膨大で良質な情報をいかに受け止めるかということを指南するということである。
「「現代世界」を把握しようとするとき、私たちは個別・具体的な事実や数字を組み合わせ、自問自答しながら一貫した物語をつくる必要に迫られる。そのためには、体系化、構造化、相対化、全体像、位置づけ、遠近法など、「関係」を表現する技術が求められる。図は全体の構造と部分同士の関係を表わせるため、「わかった!」という腑に落ちる感覚を味わうことができる。本シリーズを血肉化するための「図解思考」の考え方と技術を学ぶ。」
今回の毎週の講座は春学期のラインアップだが、秋学期も山内昌之、カンサンジュン、などの論客が顔をそろえる予定。
会場に来ていたNPO法人知的生産の技術研究会(知研)の仲間と合流。八木さん、近藤さん、秋田さん、小林さん、私と妻とで聖蹟桜ヶ丘のビルに入っているレストランで食事をしながら、いろいろと話が弾んだ。