吉行淳之介、宮城まり子、中勘助、芹沢けい介。どの記念館を訪ねよう

環境の大きな変化の中で、このところ数年間没頭している「人物記念館の旅」に集中できなかった。
二つの小さな雑誌に連載していて人選と執筆に入っている。今回は樋口一葉東山魁夷を組み合わせることにした。毎回二人づつとなると、何か共通性、関連性を考えながら人選することになる。今までは、蘇峰と蘆花のような兄弟や、著名な画家同士、同じ地域というように組み合わせてきたが、源氏物語千年紀に関係した樋口一葉と、オリンピック聖火リレーで話題になった長野善光寺の話題に関係する東山魁夷を組み合わせることにした。また、両方とも、記念館や企画展を含め複数回訪問したこと、そして著書をじっくり読んだことなども共通している。だから初めての時系列での日付入りの原稿となった。
「あの源氏物語は立派な作品ですが、書いた人は私と同じ女性です」と日記の中で紫式部のことを述べた樋口一葉は、1年と2ヶ月の間に「たけくらべ」などの10本以上の名作を一気に書き、「奇蹟の十四ヶ月」と言われたが、その1年後には24歳で他界している。
日本最高峰の風景画家・東山魁夷は、「時が過ぎ去って行くのでは無く、私たちが過ぎ去っていくのである」という名言を残しているが、この人の作品は長野信濃美術館・東山魁夷館で最初に観た。この館は長野の善光寺の近くにあった。

今週末には講演で静岡に行くので、資料を調べてみた。
まず、静岡市には、中勘助文学記念館と芹沢けい介美術館があった。中勘助(1885年ーー1965年)は大正ー昭和時代の小説家で詩人。「銀の匙(さじ)」などの名作を書いている。漱石の弟子の一人だ。
芹沢けい介(1895−−1984年)美術館は仙台の東北福祉大学の中にあったので、私にとっては比較的馴染みが深い染色家である。柳宗悦民芸運動に加わって優れた作品を多く残している。静岡は生誕地である。
また、静岡から少し関西寄りにある掛川には吉行淳之介文学館がある。吉行淳之介(1924−−1994年)は、戦後後期から平成時代に活躍した小説家で、今でも雑誌などで特集が組まれる人気作家である。近くに、宮城まり子のねむの木こども美術館があるそうなので、そこも訪れたい。吉行淳之介と宮城マまり子は恋人同士だった。
しかし、スケジュールからみて全部は無理だなあ。どれを選ぼうか。