寺島実郎監修リレー講座「「現代世界解析講座」(多摩大学)

k-hisatune2008-09-25

前期に引き続き、寺島実郎監修リレー講座・現代世界解析講座。「いま、世界潮流と日本のあり方を考える」の後期が多摩大学で始った。

第一は監修者の寺島実郎さんの講義。
・前期の講座の最後の自分講義は7月10日だった。それから2ヶ月半がたった。この講座で言いたいことは「外は広く、内は深い」(鈴木大拙)ことだ。知的な人間の生き方を考えたい。

・第2回:山内昌之(東大大学院教授)「中東政治と国際関係の新しい構造--日本とイスラーム世界の構図」(イスラム研究者。もっとも適切な人。同い年。北海道)、第3回:沈才彬(多摩大教授)「北京オリンピック後の中国経済の行方(中学の人脈とネットワークはすごい)」、第4回:カンサンジュン(東大大学院教授)「東北アジア・コモンハウスの展望」(知的誠実さ、「悩む力」)、第5回:都甲岳洋(元駐ロシア大使)「ロシアの新体制と日露関係」(ロシア人からの信頼感が高い。ロシア人脈)、第6回:榊原英資早稲田大学教授)「世界同時不況」(ミスター円)、第7回:寺島実郎「ユーラシアのダイナミズムと日本」、第8回:中村桂子(JT生命誌研究館館長)「生命を基本に現代文明を見直す」(環境に対する際立った知見。地球の歴史の中で環境を考える)、第9回:佐高信(評論家)「日本の権力構造」(「内の深さ」を考える。正義感)、第10回:橘木俊詔同志社大学教授)「格差社会の行方」(格差問題を語るに一番的確な人。心の温かさ、視点の深さ)、第11回:尾木直樹(教育評論家)「日本の子どもと教育---世界潮流の中で---」(早稲田大学時代の同級生)。

・数字の変化に対する感受性、想像力、感度が大事だ。
・4月10日からの半年の数字の変化。イラクでの米軍兵士の死者4152人。(+149人)。9・11以降の芸軍戦死者(アフガンを含む)は4732人(+242人)。イラク人の死者8.5万人から16万人。
・7月10日からの変化。さらにアメリカの求心力が低下した。サブプライムローンからリーマンショック
・冷戦の終焉(資本主義の勝利)、グローバル化の時代(アメリカ流株主資本主義)、アメリカの奢り、金融資本主義の崩落へ。どこへ行くのか?
・今世紀に入ってドルはユーロに対し7割の価値下落。エネルギー価格は4倍。−−アメリカの凋落
・7月上旬以降。洞爺湖サミット(先進国は世界を束ねられない。G8では何も決まらない、全員参加型秩序へ)、WTO交渉決裂(インド、中国の強硬な主張)、北京オリンピック(メダル数の状況は全員参加型に。50カ国以上が金メダル。87カ国がメダル)。
・アメリカは過剰な軍事力と過剰な消費できた。それは経常収支の赤字を資本収支で補ってきたから。ところが金が還流しなくなった。
・ロシアのグルジア侵攻。外貨準備は世界3位。2008年に一人当たりGPは1万ドル水準を超える。これは日本の1981年の水準。強気のロシアに、アメリカと欧州(NATO)は動けなかった。アメリカの石油技術と交換(ロシアのエネルギー外交の源)した中央アジアキルギスタンの米軍基地は使えなかった。ウクライナなど周辺諸国に不安感。日本の座間にはアメリカ陸軍第一司令部があり、今後はここを使わざるを得ない。巻き込まれていく。ヒトゴトではない)。しかし、グルジア侵攻後、ロシアは急に萎えてしまった。ルーブルの3割下落(ヨーロッパに協調)。400億ドルの投資が避難。世界の相互依存をロシアは学んだ。
北京オリンピック後に燃え尽き症候群となった中国も沈黙を続けている。中国もロシアも世界の相互依存の力学に気がついた。孤立して生きてはいけない。
・中東ドバイ。開発ブームに沸くドバイ。石油に依存しない国造り。中東のシンガポール。中東の地政学的リスク次第でどうなるか。ロンドン-ドバイ-バンガローる-シンガポール-シドニーは一直線に並んでいる。これは大英連邦のネットワーク。これらが密接に協力し合っている。

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今回の講義は、4月以降の世界の動きの確認、7月以降の世界潮流の変化を示したうえで、アメリカ、ロシア、中国、中東の最近の情勢を包括的に語った。来週以降は、それぞれの地域の論客たちが各論を語っていくということになる。
前期のリレー講座の内容をまとめた本が、10月にはできる予定。

多摩大学の1年生400人と一般300名の700名。一般の前期からのリピート率は6割だった。二つの会場に分けて映像でも流した。前期は前方が社会人、後方が学生だったが、後期は、社会人を挟んで、前方と後方に学生という配置の工夫を行っている。

実りの多いリレー講座になるとの予感がする。