「北京オリンピック後の中国経済の行方」(沈才彬)

k-hisatune2008-10-09

本日の多摩大学寺島実郎監修リレー講座は、中国問題の論客・沈才彬多摩大教授の講義。

  • 北京五輪は成功した。
    • 開会式出席の国家元首・首脳(80超で史上最多)・金メダル獲得国・地域(55)メダル獲得国・地域(86)で史上最多・視聴者数(アテネ五輪の3倍・シドニー五輪の4倍で史上最多)・テロと大気汚染と選手の食中毒事件もない・ボランティアの若者たちの情熱と親切さを石原都知事の絶賛。
    • 中国国民感情の対日感情が好転し、日本選手を応援する中国人の姿が目立った。これは、日本人選手の品性ある行動に中国国民が感銘を受けたことが大きい。(日本女子サッカーのドイツ戦へのブーイング後の「謝謝」という言葉の書かれた横断幕などで中国人は驚き大論争があり、反省)。文化交流、スポーツ交流が大切。
  • 北京五輪は中国の先進国脱皮への「成人式」
    • 新興国は開催後は、経済成長・先進国入り(OEC加盟)・民主主義体制への移行、これが過去の教訓。(1964年の日本・メキシコ・1996年の韓国)
    • 中国は先進国へ脱皮していく。痛みを伴う長いプロセスは始まる。
  • 「内憂外患」
    • 内憂--農民暴動多発・民族対立不安・株式バブル崩壊・インフレ昂揚
    • 外患--米国景気後退の影響と金融危機ショック(対米輸出に急ブレーキ・香港「東亜銀行」の取り付け騒ぎ
    • 金融危機の影響。中国(株価下落・外貨準備など資本市場への影響大)、日本(輸出など実体経済への影響大)
  • 中国経済は、政変(文化大革命・四人組・天安門事件)に弱く、外部危機に強い。
    • 当面、政変の発生は考えにくい。(五輪と有人宇宙船成功で、胡錦トウ政権基盤は強化)
    • 経済対策は、危機対応に対し迅速に政策転換を実行(インフレ防止・安定成長)・金融緩和・減税や中小企業対策など総合的景気対策・財政収入の急増(黒字)で財政出動が可能
    • GDP成長率。2008年は10%、2009年は8%、2010年は8%。2020年まで6−7%成長。
    • 上海万博(2010年)以降は、不満爆発の恐れ。矛先は格差問題と政府幹部の腐敗。3つの格差(地域格差10倍、日本2.4倍)、都市と農村の所得格差(3.3倍。実質は6倍)、富裕層(10%)と貧困層(10%)の格差は100倍。前腐後継というブラックジョーク。
  • 2013年は要注意の年(2013年には日本を抜いて世界2位へ)
    • 政権後退の年(権力闘争・不測事件)
    • 米国によるチャイナ・バッシング
    • 経済清張の最大の壁は民主化問題
    • 「中国沈没」は一時的。農民所得の増加がカギ。内需拡大と格差是正に向けて10月の中央委員会で農村改革案を発表の予定。
  • 日中関係
    • 摩擦はあっても、日中関係の大きな後退はない。相互依存の経済構造、戦略的互恵関係
    • 「親米睦中」という日本の外交戦略。日本は外需を呼び込め
    • 外国人観光客誘致のカギは中国人。2007年835万人を2020年2000万人。中国人2007年94万人を2020年600万人。--11%から30%へ。
    • 日本と中国はwin−win関係へ
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沈先生の講義は、アメリカの金融資本主義は「小人経営」、求められるのは「君子経営」。北京五輪での日本人選手の品性が感銘を与えた。中国の成長は、今年10%、来年8%、再来年8%、そして2020年まで6−7%。2013年に注目。親米睦中を日本の外交戦略に。、、などが大切なポイントである。
マスコミ
・現代中国の政治・経済を鋭く切り取る屈指の論客。緻密で正確な分析と公平な視点は、日本の政財界から高い評価を受け「中国問題最強のアナリスト」との呼び声が高い(毎日新聞
・今、わが国では中国を語らせたらこの人の右に出る人はいないといわれるのが沈さんである。何といったって話が具体的だし面白い。(電気新聞)
・豊富な現地情報と大胆・強気な分析が人気。(文芸春秋