「菜根譚」という中国古典がある。
いつかは読まねばならないと思ってきたが、ついに今日まで読む機会はなかった。この書は洪自誠という400年前の人の手になるものだが、儒教精神の上に、仏教と道教の教えを取り入れて編んだ「清言集」である。書名は、宋(そう)の汪信民(おうしんみん)の『小学』における「人常に菜根を咬(か)みうれば、すなわち百事をなすべし」からとっている。
先日、外出した折、FeBeというオーディオブックサービスの「中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚」というCDを手に入れ、それをパソコンに入れて、アイフォンに取り込んで往復の途中に聴いてみた。
往復の電車3時間強の間、珠玉の名言をずっと聴いたが、この一日だけで名著「菜根譚」の全貌を概略ながらつかんでしまった感じがした。もちろん、一条一条には深い含蓄はあるのだが、一気に全体を聴いてしまうと、今までの長い躊躇した時間はいったい何だったのかと感じてしまった。
「耳で古典を聴く」ということは、新しい世界が開けたということである。
もともとこのサービスは、視覚障害者へのボランティアによる音読サービスとして出発したものと聞いたが、携帯オーディオ機器の進化とあいまって、読書という世界に革命をもたらしつつあるという感を深くする。
価格:1785円。時間:3時間7分11秒。容量:171.4MB。製作元:オトバンク。出版社:ディスカバー21.