「修士論文の書き方講座」(大学院)を開講---作法より方法を学べ

午前は講義。午後はプレゼミ。夜は品川で大学院講義。

大学院(社会人)では、「修士論文の書き方講座」をやってみました。院生が共通で悩んでいるテーマです。過去1年間の修士論文の発表会に参加して感じた院生の共通の欠陥を前提にそれを補う方法論を教える講座という問題解決型テーマに挑戦してみました。

過去一年間に見聞した修士論文の内容と共通の欠陥を前提に、日本を代表する文章読本の名著の内容をそれぞれ要約した図5枚、それらをまとめた全体図一枚、そして知的生産の技術の名著の図、私の開発した「図解文章法」という方法、こういう材料をもとに、「修士論文の書き方」というテーマの修士論文の概要を実際に文章で書いてもらいました。

これだけの名著がありながらなぜ文章を書くことが苦手なのか。5つの代表的な文章読本の名著を書いた人たちは学者、評論家、新聞記者など書くべき中身を持っていた人達であり、文体論に方寄っていたからです。私たちの悩みは、文体にあるのではなく、むしろ書くべき中身がないということに起因しています。書くべき中身、つまり清水幾太郎のいう「答え」や、野口悠紀雄のいう「メッセージ」の作り方がわかなくて困っている人が多いのです。文章読本たちは内容のつくりかたについては明快な答えを出してくれてはいません。書くべき内容をつくりだすためには図を描くことが有効であり、内容を十分につくり込んだた上で、それを文章に落とし込んでいけば、迷うことなくスラスラと論文が書けることになります。

この過程には、先行研究、他分野のモデルの援用、新しい知見など、修士論文を書くための要素が入っています。この書き方を体感し、納得した上で、それぞれのテーマに適用してもらいたいと思います。

授業で取り上げた名著は以下の通り。

以下、本日の土曜日の早朝までに書きこんでもらった社会人大学院生の感想です。あと数人の感想も後に加える予定。

  • 6月5日のご講義では修士論文演習を図解の考え方で進めました。私たち論文を書こうとするものは、「論文の書き方」のような本を読み漁りますが、たいていは硬直して面白みのないものを書くことになってしまいます。久恒先生はそのテーマに合致する名著といわれるものを昭和から平成にかけての代表的な著作物からピックアップし、問題点を図説してくださいました。問題点は「そもそも書くべきものの内容をたくさん持っている人が書いた本であり、彼らは書き方ばかりを気にかけている」ということでした。私たち修士論文を書こうとするものは、書きたいことを図解して整理し、論文骨子を俯瞰することをすべきなのですね。流れがよく見えるまで、図で明確にし、論旨の展開ができるようにするということですね。今日はその点がすっきり解明できて、迷いなく論文を書くことができそうです。論文は内容×文章であり、文章の書き方だけを名先生に誘導してもらってもかけないということ。書き方だけを追及した論文の書き方の本をいくら読んでもくだらない論文になるだけ、ということ。過去の論文をたくさん読む必要があると思っていたのですが、書きたいことを人にいかに分かってもらうように書くか図で追求して骨子を作ってあとは枝葉をつけていくという点をしっかり納得しました。今回も有意義なご講義でした。また、会議における図の使い方のヒントも頂きました。大変ありがとうございました。
  • 本日の授業は、先生が修了論文の書き方のヒントとなる図を事前に準備され、生徒はそれをベースに「修論の書き方」という文章にまとめあげていくというものだった。図を見ながら、文章を作り上げていく作業は、結構、快感で、サクサクと文章が出てくる。だれかに背中を押されているような感覚、図からエネルギーをもらっているような感覚だった。今回の授業も、不思議な貴重な体験でした。ありがとうございます。
  • 本日の講義では先生の作られた図解から、文章への展開を行った。おそらく各人の展開は図解同様に同じものにならないと思うが、図解により整理された内容を文章へ落とし込む事にはあまり抵抗なく文章化が行えたと思う。論文の骨子や各章毎に図解があれば文章化することに対してそれほどの苦労はなさそうなことが理解できた。しかし、内容のある図解をいかに作り込むかがこれからの課題であると考えます。
  • 図解のパワーは文書作成にも大きな効果があることが実感できました。普段から文章を書く際は、「骨子を組み立て>肉付けする」というプロセスは実践しているつもりでしたが、図解をベースに文書化するプロセスと比較すると、図解の方が圧倒的に、複雑な問題を文書化しやすくなると思いました。おそらく文章は、問題の構造を平面的にしか捉えられず、図解だと立体的、複層的に捉えられるからだと思います。ただ、自分の論文に活用、、となるとまだまだ先が長そうです、、
  • 文章を図にしたり、人の話を聞きながらボードに整理してはいたが!図から文章に持って行く必要度と発想がなかったでした。文章に落とすことを意識するともっといい図が書けそうです。図は「モレ、ダブり、関係」が解りやすく新たな気づきには、今のところ他にツールがないとおもう。「図解」とは図は直感的に捉えられ解りやすいという事でしょうか!考えはクリティカルにまとめ、図でロジカルに整理してみたいです。
  • 「図」という英語がないというのは、初めて知りました。以前テレビで紹介していたのですが、日本語を母国語とする私達は、文字を形(イラスト)で覚えるそうです。テレビの司会者がある文章を日本語と英語をテレビ画面にパッと1秒だけ見せました。パネラーは、日本語だと1秒でも何が書いてあるか理解できました。しかし、英語だと何が書いてあるのか、1秒では理解できませんでした。テレビを見ていた私も同じでした。英語力はないとはいえ、英語はやはり単語(アルファベット)を全て見ないと理解ができませんでした。でも日本語だと一瞬で理解できました。日本語ってすばらしいと思った瞬間でした。図も、日本語と同じなのだと今日の講義で認識しました。是非とも図のすばらしさが海外にも浸透して欲しいと思います。
  • 6月5日の講義では、修士論文を書くにあたり大いに役立つ手法を教えていただきました。今回掴んだ大きなポイントは下記の2点です。

①「概要→細部」で図解。論文の概要を図解し、関係性を理解する。並行して各論についても図解し、関係性を理解する。これらの作業を何度も繰り返して考えを深め、図解論文を完成させる。その後、図解論文に沿って、論述する。
②「知見は新しい関係性の発見である」。上記の関係性を理解しながら何度も図解していくうちに新しい関係性を発見できる。これが知見であり、仮説となる。
以上、今回も参加して本当に良かったです。久恒先生、受講生の皆様、ありがとうございました。