構想博物館(極楽塾)はどこにある?

k-hisatune2009-06-15

11時に日本経営合理化協会の担当の方が見えて、中小企業の社長たちを対象とした講演と研修の依頼を受ける。
日本経済を活性化するためには、中堅・中小企業が成長、発展することが不可欠との考え方から、その経営業務合理化に必要な諸事業を総合的に推進している団体である。新規創造企業と中小企業セクターを主な会員とし、経営指導、経済動向等の変化へ対応する各種研究会、海外企業進出や事業提携の仲介、新しい商材の発掘、経営者向け書籍、ビデオやテープ、海外視察研修など、様々な支援を行っている。

15時に鎌倉に望月照彦先生の構想博物館(極楽塾)を訪問する。NPO法人知的生産の技術研究会の出版プロジェクトの取材で、知研のメンバー数人と一緒。鎌倉駅からタクシーで向かったが、それは素晴らしいお宅で、改めて望月先生が建築家だったことを確認した。少人数でディスカッションできる書棚のある書斎、それに続く六角堂を模した知の現場。六角形なので、机の向きが3面とれる。それぞれ、アナログ、デジタル、クラフトをする机となっている。その窓からは美しい緑がみえる。

音楽ホールにもなっているリビング、2階には映像スクリーン付きの寝室や、茶室、小さなミーティングができる部屋もあり、その部屋からは屋上に出れて、富士山や江ノ島などがみえるという。あちこちに何気なく置いてある家具などもいわれがあり、実に趣味がいいという印象を受ける。絵は藤田継治。

「構想博物館はどこにあるんですか」という質問に、「頭の中にあります」という答えから始まったインタビュー終了後に、手入れの行き届いたガーデンで美しい奥様が用意してくださったでシャンパンをいただきながら楽しく歓談したが、土地が斜面にあるために大木もすぐ間近に感じることができた。その枝にはリスが巣をつくっていた。

30歳を少し超えた頃、参加していた「知的生産の技術」研究会で若き望月先生の講演を聴いたり、仕事場に押しかけたり、横浜での研修会で前座をつとめたりしたことを思い出す。優れたコンセプトメーカーであり、その発想に驚くことが多かった。宮城大時代には、東北活性化センターがつくったコミュニティビジネス研究会で委員長の望月先生と一緒に新しい分野の勉強をしたこともある。多摩大に移った後は、先生のつくった「現代の志塾」という言葉を、改めて多摩大の志にするということにしたのだが、その過程でいろいろアドバイスをいただいた。

  • 時代に直面していることに関心がある。
  • 知の怪人二十面相
  • 奥尻島(身の丈島)、世田谷(サザエさん研究)
  • 恩師。小林ぶんじ(住宅と一国の歴史)、中村秀一郎(ベンチャーのフィールドワーク)、草柳大蔵(もの書き修行)、木村尚三郎(風景がメモ帳)
  • 人。島津斉彬。大原幽学。はたの鶴吉。
  • 世直し。
  • アナロジー思考法。アナロジー型トレーニング。コンセントレーション。
  • 人間は考える足である。ミョウバン。内なるグーグル。DNAに聴く。観光リスクマネジメント。情報は集めずばらまく。頭書館。テンポロジー(店舗学)。フィールドアルク。コンパートメント社会。ライフウェアマネジメント。知的生産とはよりよく生きること。情報のフック。文化のダム。宇宙を構想し身の丈で生きる。

30代初めの頃に、今回の企画と同じように知的生産者の書斎を訪ねるプロジェクトを実施し、「私の書斎活用術」という本にまとめて講談社から出したことがある。そのプロジェクトで16人の著名な方々の自宅を訪問したのだが、それは今まででもっとも楽しいプロジェクトだった。そのとき紀田順一郎先生の百合ヶ丘の自宅を訪ねたとき、これこそ理想の書斎だ、と感銘を受けたが、この望月邸にもそのような感じを持った。

帰りに、いただいたせたがや自治政策研究所「都市社会研究」の「地域から世直しを考える(世田谷型地域経営論)−−サザさんスタイル、身の丈コミュニティ・マネジメントのすすめ」と「多摩ニュータウン研究」の「地域と大学のアライアンスの可能性を探る」という二つの論文を読んだが、大いに触発された。
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東京に出て、日本工業倶楽部で行われたGIN総研主催の寺島実郎講演会に少し遅れて出席。モータリゼーションと石油の相関と相乗の20世紀との比較で、電気自動車再生可能エネルギーとITとの相関と相乗の21世紀の可能性の話。アメリカは危機にあたって、リーダーを変え、新たなパラダイム転換をしてくる可能性がある。寺島さん自身としては、様々の委員会やプロジェクトをあり得べき方向に収斂させ、まとめていくという役割が増え、立ち位置の変化が起こっている。「相関、相乗、全体、一体、総合」がキーワードだった。

パーティでは、多摩大学の母体・田村学園の田村常務理事、大学院の長田先生、学部の金先生、矢内事務長、高野課長らとも歓談。

「寺島文庫」のパンフレットが配られた。「便利な都心に、書庫を中核とする知的活動の基点」「情報交流、知的相互啓発、研修・研鑽の拠点」「「シナジー効果」という言葉とともに、「北辰の其の所に居て、衆星の之に共(むか)うがごとし」という言葉が紹介されていた。北辰とは北極星のことだが、それは寺島自身ではないだろうか。