「知の現場」(東洋経済新報社)の見本が届き感激!

NPO法人知的生産の技術研究会(私は理事長をつとめている)の今年最大のプロジェクトが本として結実した。「知の現場」というタイトルで東洋経済新報社から12月24日に刊行されるが、本日見本が二冊届いた。
このNPO知研の40周年記念として企画したもので、組織の総力を挙げて21人の先生方の知の現場を取材し、それを一冊の本にまとめた。私はこの企画の発案者と監修者という立場で関わったのだが、多くの若いメンバーが存分に力を発揮したプロジェクトになったため、進行の全体と取材への同行が主な役割となった。このプロジェクトの遂行によって、このNPOの足腰がしっかりしたのが最大の収穫となった。まさに、人はプロジェクトによって育つ。
現代を疾走する21人の賢者たちの活動が横断比較しながら一望できる内容となっており、それぞれがまた深く示唆に富む語りとなっており、監修者としてとても満足している。
登場する人達は、寺島実郎、奥野宣之、北康利、樋口祐一、武者陵司、望月照彦、松田忠徳、野村正樹、久保田達也、久恒啓一、久米信行、昇地三郎、小中陽太郎、小山龍介、望月実、松山真之助、山田真哉、原尻淳一、田中靖浩、小飼弾、桝井一仁。

このプロジェクトの全体像がよくわかると思うので、監修者の立場で書いた「あとがき」を掲げる。
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あとがき

 現在のNPO法人知的生産の技術研究会が、まだ「知的生産の技術」研究会という任意団体だった四半世紀前に、当時新人だった私たちは本をつくるというチャンスに恵まれた。
 それは、2年間の準備期間を経て1983年に「私の書斎活用術」(講談社オレンジバックス)という本に結実したのだが、今思い起こすと著名人の自宅の書斎や仕事場を訪問し、自ら質問し、持参したカメラで写真にとり、原稿に起こすというこの貴重な得難い経験は、今でも私自身の血肉となっていることを実感している。
ご登場いただいたのは、紀田順一郎、加藤英俊、下重暁子和泉育子長谷川慶太郎植田康夫高根正昭、藤本ますみ、松本道弘加藤栄一小中陽太郎、池中万吏江、河原淳水木しげる浜野安宏小室直樹という当時のトップランナーの先生方だった。
この16人を「書斎派」「仕事場派」「アジト派」「アトリエ派」「デン派」というように、書斎をどのような呼び方をしているかという基準で分類をしてみた。その後、25年以上の年月が経ったのだが、私自身の研究会の長い活動のなかでももっとも記憶に残る、楽しい、充実した経験だった。
 このたび、「知研」で本を出すという企画が持ち上がってきたとき、自分たちが育ったこのようなプロジェクトを遂行したときに味わう高揚感を会員たちに経験してもらいながら、「私の書斎活用術」の現代版をつくるという構想が浮かんできた。そのとき最初に「知の現場」というタイトルが決まった。
 現代を疾走する知的生産者たちは、どのような「知の現場」で活動しているのだろうか、そして彼らの知的生産の秘密は何だろうか、そういう問いを持ちながら半年ほどで一気に取材を敢行したのだが、結果的に現代の「知」の志士たちの動きがわかる絢爛豪華な内容になったと思う。取材に応じていただいた先生方には深く感謝したい。
 年齢は30代から最高齢は103才のしょうち三郎さんまで、また仕事も、作家、経営者、会計士、大学教授など実に多彩なメンバーがそろっており、現代の「知の最前線」を感じていただけるだろう。
 生き方、仕事のやり方、情報への接し方、志、人との付き合い方、テーマの選び方、知的技術、道具など、この本には広大で豊かな沃野が広がっている。横断的に読んで楽しむだけでなく、興味を持った人についてさらに深堀りしてみるのも面白いと思う。
 この本では、便宜上、「知の現場」を切り口に「書斎派」「フィールド派」「人派」「どこでも派」と分けてみたが、「人派」や「どこでも派」は比較的年齢の若い人になった。まだまだ発展途上の若い人や、ITを武器にしている人が多いことが影響しているようである。
 改めて全編を読み返してみると、それぞれが明確なテーマを持っていること、またそれぞれが「知的生産・私の流儀」といってよい知的スタイルを確立していること、そして何よりも人生を楽しむ姿勢があること、そういう感を強くしている。
 先日竹橋の国立近代美術館で開催された「ゴーギャン展」で、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という名画を観る機会があり感銘を受けたが、今回登場いただいた方々は、同じように自分の「これまで」と「今」と「これから」を明快に語っている。誰もが、過去から現在へ歩んできた道のりと、現在から未来へ続く道筋をしっかりつかんでいた。これも共通の特徴といえるだろう。
社会がどのように変わっても、自分を磨き続けることが重要であることは論を俟たない。読者にはこの本を自らの成長のための参考にしていただければ嬉しく思う。
最後になったが、この企画を勧めていただいた東洋経済新報社の清末真司編集部長、そして実際に手間のかかる編集を精力的に担当していただいた中村実さんに深く感謝したい。

また、今回リーダーとして活躍した秋田英澪子さんを始めとするプロジェクトの体制と18名の参加者を以下に記し、感謝のしるしとしたい。
【プロジェクトリーダー】 秋田英澪子(事務局長)
【図解作成】横野洋卯子(仙台支部長) 【ビデオカメラ撮影】 幅 健一(東京本部)
【原稿添削指導】近藤節夫(日本ペンクラブ会員・知研永年表彰会員)
【プロジェクトメンバー一覧(参加支部別)】 【取材・編集・音声記録・写真撮影】
知研・札幌支部(岩瀬晴夫・松本伸之)同仙台支部(横野洋卯子)同東京本部(八木哲郎・久恒啓一・秋田英澪子・小林尚衛・近藤節夫・水谷弘隆・丹下明・幅健一・遠島啓介・田村修一・蓑島和浩・池中万吏江) 同関西支部(溝江玲子・諏訪仁) 同福岡支部(常富博史)総勢18名(いわき・ひたち支部と東海支部・岡山支部も活発に活動しておりますが、今回は近隣の取材先がなかったため、取材には参加致しませんでした)。
                久恒啓一NPO法人知的生産の技術研究会理事長)
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本日のリレー講座は、読売テレビ特別解説委員の岩田公雄さんの「世界の報道最前線に立って」だった。「生涯一記者」を座右の銘とする岩田さんには講義の前にご挨拶したが、ずいぶん昔、赤坂あたりのバーで会ったことがあるのを思い出した。
夜は、ホームゼミの忘年会。20人が集合し、2時間ほど楽しくコミュニケーションをはかった。