「世界を知る力」−−マージナルマン・寺島実郎の世界認識の方法

k-hisatune2009-12-19

10時40分:多摩キャンパスで教授会。
12時10分:大学入試センター試験説明会
14時30分:九段サテライトでホームページ打ち合わせ
15時30分:学長と打ち合わせ
16時20分:インターゼミ(社会工学研究会)
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今日は学長と雑談も含め、じっくりと打ち合わせができた。「知の現場」(東洋経済新報社)の見本も贈呈する。
寺島実郎著「世界を知る力」(PHP新書)が、売れているようだ。2万部刷って出したばかりだが、本日7千部の増刷が決まったそうだ。いつもの本と違ってやさしい語り口で書かれており、読みやすい。硬派論客としての知名度とも相まって、この新著は相当売れて多くの人に考えが伝わると思う。オビには「全体知の巨人」とある。寺島さんの全体像については次を参照されたい。http://www.tama.ac.jp/terashima/

さて、今回は、本文の内容ではなく、「はじめに」と「あとがき」から、寺島さんの世界を知るためのスタンスを書き抜いておく。

  • 「世界を知る」といいつつ、実は、偏狭な認識の鋳型で「世界」をくり貫いているだけだということが生じたりする。鋳型が同じであるかぎり、断片的な情報をいくら集めたところで、「世界」の認識は何も変わらない。
  • いまこそ、時代や環境の制約を乗り越えて、「世界を知る力」を高めることが痛切に求められているのではないか。
  • 高名な禅の研究者、鈴木大拙のように「外は広く内は深い」という問題意識に立てばいいのである。
  • 過去から現在へとつながる筋道を検証することによってのみ、未来を生きるための知恵が求められる。
  • 大空から鳥が世界を見晴らすように、宇宙船から地球を望むように、世界を認識することが必要である。その一方で、虫が地面を這うように、自らの足を使って生身で現代社会を生きる人間の表情に触れること−−人間社会の深みを知ろうとする営為も求められる。
  • 「問題は何であり、自分は社会において何をなすべきか」という意識が、わたしを突き動かしてきたように思う。
  • わたしの生活を振り返るならば、航空機のなかで、そして列車のなかで、考え込みながら生きてきたようなものである。この移動空間は、ひとりの時間が確保できる場でもあり、沈思黙考、後にしてきた場所で目撃し、確認してきたことを整理することのできる貴重な機会である。
  • この本は、若いゼミの学生か現場を支えるサラリーマン、時代を鋭い感性で見つめる知的女性に語りかける意識でつくられたものであり、これを手にした諸君が何かひらめいてくれれば、望外の喜びである。
  • わたしは「マージナルマン」という言葉を心に抱いてきた。マージナルマンとは境界人という意味で、複数の系の境界に立つ生き方という意味である。ひとつの足を帰属する企業・組織に置き、そこでの役割を心を込めて果たしつつ、一方で組織に埋没することなく、もうひとつの足を社会に置き、世界のあり方や社会のなかでの自分の役割を見つめるという生き方、それをマージナルマンという。
  • 自分の時間を確保する努力をし、会社の外の研究会に参加したり、フィールドワークをする試みを続け、それを毎夜机に向かい整理して作品のにしてきた。
  • 自らのテーマをもち、自らのライフスタイルを貫く意志をもちながら、帰属組織に腰を据えて参画する、これがマージナルマンの生き方なのである。
  • 産学官の境界を見つめることによって、それぞれの相関のなかで時代が鮮明に見えるということもある。わたしの心のなかでは、産学官シナジーのなかでひとつの仕事を貫いているという実感がある。世界を知り、課題に挑戦するという仕事である。
  • 時代は断片的な分断された知性ではなく、ますます総合化・体系化された知性を必要とする。そうした方向で、わたしの周りに、現場を支える若い知性を育てること、そこに大いなる意欲をかきたてられる。