孫正義の「「事業家」竜馬こそ私の手本」−「文藝春秋」4月号

雑誌の廃刊が続いている。生き残っている雑誌にしても広告が入らないのですっかり薄くなってしまった姿を書店で見かけるようになった。
文芸春秋」という年配向けの雑誌は、意外に健闘していて、40万部という線を維持していると聞いた。4月号を改めてめくってみた。
文藝春秋 2010年 04月号 [雑誌]
冒頭のエッセイ欄はなかなか読ませるものが多い。私が好きなのは作家の阿川弘之の身辺を巡るエッセイだが、ここ数回は「水交座談会」シリーズで二次対戦の当事者の軍人達の回顧録を載せている。はやくもとの身辺エッセイに戻ってもらいたい。

作家の林望の「近世文学としての源氏物語」は、「活き活きとした現代語訳を書きたいという大きな大きな宿志を抱くようになった」経緯を書いてあり、この3月の第一巻から始まる「謹訳 源氏物語」を2年ですべてを書き切ってしまう計画だそうだ。だから目下、荒行のような生活中であるとのこと。ライフワークに敢然と立ち向かう姿がいさぎよい。

駐日インド総領事のヴィカス・スワラップは、「日本に来て、もう一つ驚いたことは、日本の将来を悲観的に見ている人がいることだった。特に実際に会ったメディアに携わる人々に多い。、、共感できなかった。、、、日本人はもっと自分たちが築いてきた社会に自信を持っていいのではないだろうか。」この見方に私も大いに共感するところがある。

ソフトバンク孫正義の「「事業家」竜馬こそ私の手本」もよかった。

  • 私のいう事業家とは、事を成す、新しい世の中の仕組みを作り上げる人のことです。、、、人々のライフスタイルや、社会のインフラなどに劇的なパラダイムシフトを成し遂げる。それが事業家であり、すでに出来上がったシステムを治め運営するのが経営者であり政治家の仕事になります。(セコムの飯田氏から同じ考えを聞いたことがある。政治家は事業家ではないと言い切っているのが面白い)
  • 人生を登山にたとえるならば、自分の登りたい山を決めることで、人生の半分は決まると思います。
  • 事業は初期設定が非常に大切です。第一歩に、その事業の可能性が集約されているといっていい。
  • 今の日本に最も欠けているのは、リーダーシップと立国のための戦略だと思います。
  • 今の日本に必要なのは情報立国への戦略なのです。、、情報技術を生かした生産、流通システムが必要になる、ということです。
  • 情報化社会という新しいパラダイムのもとで、どう日本の競争力を高め、人々が幸せに暮らしていけるようにするか、法律や国家予算の配分なども含め、真剣な議論が必要だと思います。

磯田道史の連載「新代表的日本人」は中根東里だった。
四書五経は指にすぎない。大切なのはその彼方にある月だ」
「書を読む人は、読むまえに、まず大所どころは、どこかを考え、そこをきちんと読むことを心掛けてください。、、みなさんは道を得るために、まっしぐらに、書物のなかの大切なところをみつけて読んでいかなくてはなりません、、、」(図解の考え方と同じだ)
「聖人の学というのは、煎じつめれば、仁の一字につきます。仁とは万物一体の心のことです。義も礼も智も信も、みな、そのなかに含まれます。」
「一、樵父は山に登り、漁夫は海に浮かぶ。人おのおの、その業をたのしむべし。二、水を飲で愉しむものあり。錦を着て憂えるものあり。三、出る月を待つべし。散る花を追うことなかれ。」(学塾にくる人の心得「壁書」)(大学のゼミにも壁書が必要だ!)

文春ブッククラブには佐藤優の連載がある。4月号では冒頭の「ある問題について究明する場合に、避けて通ることができない本が私の考える古典だ」には納得。