創業者・経営者の「美術館」という社会貢献

人物記念館を巡っていて不思議に思っていたことの一つは、小説家、画家、彫刻家などの記念館は多いが、実業人・経営者の記念館はあまりないということだった。書物、絵画、彫刻などは形があり、展示する方向が明確であるからだろうと考えていたが、起業家や企業家は「企業」という生き物を産み、その生き物が成長しているから、企業自体が人物記念館であるということなのだろう。
安定した大企業となった企業の中には、創業者の事績を示す記念館らしきものがあることもある。例えば、大阪のパナソニック松下幸之助、京都の島津製作所の島津源蔵など。それぞれの企業は創業の精神を忘れないため、そして企業のDNAを確認するために立派な記念館を擁している。

さて、今日の企業を創った明治期を中心とするする創業者・経営者は、功なり名を成した後に、美術品の収集に走り、結果として美術館という形で残っているケースが多い。私達はそういう美術館で行われる展覧会を観ることができるという余慶に預かっている。

この夏は、美術館を訪ねてそれを創った創業者、経営者をしのんでみようか。