漢文学者・古代漢字学で著名な学者、白川静は1910年4月9日に生まれ、2006年10月30日に96才で没している。
1999年から2005年にかけて24回にわたる文字文化研究所所長としての講義がDVDで残っている。89才から95才にかけての最後の講義である。前々からこの人の研究に関心があり、本も読んではいたが、思い切ってDVD「白川靜 文字講話」を入手した。
中国の藍田原人が60万年前、北京原人が50万年前に出現したのが人類の始まりである。彼らはすでに言葉を持ち、火を用いていた。5200年前にエジプトのヒエログリフという文字が生まれた。統覚作用の必要な絵画の最も古いものは5万年前で、イベリア半島のアルタミラの洞窟壁画は1万年前に出現している。そして文字が生まれたのは5千年前である。人類史50万年の最も最近5千年という1%の間に文字が生まれ、人類文化は急速に発達した。わずかの間に、地球は汚染され、人類はいつでも破滅しうる凶悪な武器を持った。
文字が生まれたという人類の文化史上非常に重要な時点において、いったい人類は何を考え、どのような経過で文字を生み出すに至ったかを考え直してみる必要があると考え、「文字講話」シリーズを行うことにした。
最後は「アジアの古代王朝として、中国と日本が、いかなるかかわりをもったか、それぞれの古代文化を、どのように形成してきたか、そこにどのような東洋の世界が展開されてきたかと、そういうことをテーマとして、考えてゆきたいと思うのであります。」という決意で締めくくっている。
一回目の講話「文字以前」を聴いてみたが、豊穣の世界を予感させる内容だった。逐次この世界に入っていきたい。
24回の講話は以下の通り。
「文字以前」「人体に関する文字」「身分と職掌」「数について」「自然と神話」「原始の宗教」「祭祀についって」「国家と社会」「原始法について」「戦争について」「都邑と道路」「生活と医療」「歌謡とと舞楽」「人の一生」「思想について」「感覚について」「載書字説」「文字の構造法について」「声系について」「漢字の将来」「甲骨文について」「金文についてい」「金文について2」「金文について3」。