震災とソーシャルメディア

東日本大震災から10日たった。1995年の阪神淡路大震災から15年以上たっているが、今回はTwitterを中心にソーシャルメディアがコミュニケーションの主役に躍り出た。数年前からTwitterが普及していたことが日本にとって幸運だった。
当日は私は職場にいたのだが、地震の直後から電話がまったく通じなくなったが、Twitterをみていると、その時々の地震震源地、震度、マグニチュード、被害状況、交通インフラの状況、被災地の叫び、などが刻々と入ってきた。私の場合、こちらがフォローしている人は2600程度でそう多くはないなのだが、これはすごい情報源であることわかった。数は力であることがよくわかった。
比較的多いのは、住んでいる多摩地区と以前住んでいた仙台だが、今回はこのこれが生きた。被災地のガソリンなどの商品販売状況、電気・ガス・水道の復旧状況などの情報を手に入れると、そのまま「RT」という方法(「公式RT」が望ましいこともフォロワーに教えてもらった)で拡散すると私のフォロワー2500人に一気に届く。今回は仙台宮城を中心とした生活に役に立つ情報を届けることが自分にできる貢献だと考えて、どんどん流してみたのだが、感謝のダイレクトメッセージもいくつももらった。
政府へのアドバイス的なアイデアはこのTwitterで流れたことがきっかけでずいぶんと政府も取り入れていたし、自然発生的にできた募金活動もあっという間に実現する様をみた。善意の輪が水面を覆うように広がって、人に対する信頼と共感があふれている熱い空間だ。
テレビで見るニュースはほとんどが、すでにtwitterで流れていることで、新しいものはあまりなかった。
また、避難所にいる人たちの名簿情報や、個人の安否確認、どんどん立ち上がる情報提供サイトの情報などの存在を知らせる第一報などはTwitterで知り、そのサイトを見るケースが多かった。HPやブログと、Twitterの相性はきわめてよい。数万人、数十万人のフォロワーを持つ有名人はもう有力なメディアであり、フォロワー数が65万人のホリエモンなどはみんなから頼りにされている。
今まで、Twitterのフォロワー数は意識していたが、こちらがフォローする人数についてはあまり意識はしていなかった。今回のケースでは、膨大な詳細情報とアイデアが急峻な川の流れのように流れており、その中の目についた情報をすくって自分のフォロワーに流していくということを経験した。フォローする人数とフォローされている人数には大いに関係があるのだ。人数を増やすことにこのところ熱意が薄れていたが、これを機会にまた増やしていきたい。ソーシャルメディアはインフラへの道を歩んでいることは間違いない。
阪神淡路大震災でボランティアが一気に広がったのだが、今回の東日本大震災ではソーシャルメディアの重要性が一気に認められることになるだろう。

以下、「佐々木俊尚のネット未来地図レポート」の最新号「震災でわかったソーシャルメディアのパワー(前編)」から。

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  • 今回の大震災をきっかけに、ソーシャルメディアの有効性が大きく注目されています。携帯電話の音声通話も固定電話も通じない中で、ツイッターのメッセージが頼りだった人。あるいはテレビや新聞が扇情的な報道を繰り返す中で、ソーシャルメディア経由の信頼できる情報で落ち着きを取り戻した人。そんなケースが大量に起き、これがソーシャルメディアを情報流通基盤へと押し上げています。
  • 1対1でかける側と受ける側の回線をつなぎ合わせなければならない回線交換システムの電話と異なり、インターネットは情報をパケットにして互いに送り合うだけで、通信することができます。通信の物理的なラインがかなり細くても、テキスト程度の情報なら破損なく送り届けることができるわけです。つまり電話だと途中で途切れてしまうとかけ直さなければなりませんが、ネットは途切れ途切れでも情報は比較的届きやすいということです。
  • 基地局が維持された被災地では、ブログやツイッターでの報告を読む限りでは、「ソーシャルメディアがあって良かった」というケースは多かったようです。仙台市などでも携帯電話の音声通話はほぼ不通で、ツイッターが唯一の連絡手段だったというブログが複数ありました。
  • Facebookが人口の6割ぐらいにまで普及しているソーシャルメディア先進国のアメリカと較べると、日本ではFacebookはまだ数百万人。Twitterも2000万人ぐらいでしょう。小学校教員というあるユーザーは、Twitterにこう感想を書き込んでいました。「教員は出来るだけ早くツイッターで『緊急時の為の学校公式アカウント』を取得し、保護者に通知することを考えた方が良い。この教訓を無駄にしてはダメ」
  • 阪神淡路大震災の経験から、被災地にボランティアに即座に行くのは難しいことを多くの人が認知しています。。特に今回は被災地が広大で、現地にはたどり着けない可能性が高い。そこで今この時点で自分たちに何ができるかを考え、Twitterで仲間を集め、実行に移すという行動が多く見られるようになったのです。
  • でもそれは、インターネットというシステムの持つ特性ではないと思います。太平洋戦争の敗戦しかり幕末しかり、追い詰められる状況になればなるほど秩序と規律を重んじて活発に動くという日本人の良い特質が、インターネットという場を通じて表に出てきたということではないでしょうか。