「東京裁判 日本の弁明」(小堀桂一郎)

小堀桂一郎(東大名誉教授)編の「東京裁判 日本の弁明」(講談社学術文庫・1995年発行)を読んだ。
本書は「東京裁判却下未提出弁護側資料」抜粋という副題を持っている。東京裁判の法廷に提出すべく作成、準備していたが、検察官の異議乃至裁判長の裁量によって却下処分され拒否された証拠資料と法廷への提出を見合わせた資料の抜粋編である。

東京裁判 日本の弁明 (講談社学術文庫)

東京裁判 日本の弁明 (講談社学術文庫)

この書の最後に、米国上院軍事外交合同員会に於けるマッカーサー証言(1951年5月3日)が掲載されている。マッカーサーは、太平洋戦争は日本が自衛のために起こした戦争であると述べている。

  • 日本は絹産業以外には、固有の産物はほとんど何もないのです。、、実に多くの原料が欠如している。そしてそれら一切のものがアジアの海域には存在していたのです。

 もしこれらの原料の供給を断ち切られたら、一千万から一千二百万の失業者が発生するであらうことを彼らは恐れていました。しがたって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのです。

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東京裁判極東国際軍事裁判)を巡る小堀の解説の要点。

  • 東京裁判の思想。第二次大戦の構造は、日独伊三国からなる全体主義国家が企てた世界制覇の野望実現の動きであり、自由主義・民主主義を国是とする連合国は、この挑戦を受けて起って専ら防衛的対処に終始した。(「平和と戦争・米国外交政策−−1931−41年)

一握りの「犯罪的軍閥」によって支配されていたのであり、、、、日本国民も亦その限りにおいて被害者の立場にある

  • 罪状:被告間に於ける共同謀議。平和に対する罪、戦争犯罪並に人道に対する罪
  • ブレイクニー弁護人「広島・長崎への原爆投下という空前の残虐をを犯した国の人間にはこの法廷の被告を裁く資格はない。」「国際法は国家に対して適用されるのであって個人に対してではない。個人伊よる戦争行為という新しい犯罪をこの法廷が裁くのは誤りである。、、戦争での殺人は罪にはならない。戦争は合法的だらです。つまり合法的な人殺しなのです」(原子爆弾投下はヘーグ条約第四条への明確な違反)
  • 「南京問題」:南京では日本軍による「大虐殺事件」が発生したのだという虚構の認識(検察側証人達の虚言からねつ造された架空の事件)
  • 清瀬弁護人の冒頭陳述は、法廷での朗読が禁止された
  • 弁護側反駁立証段階に於ける提出証拠文書の大量却下。重要な部門に於いて三分の二以上が却下された。
  • 連合国側の人道に対する罪は一切不問に付し、唯日本人にのみ、神か仏に対してでもなければ有り得ないほどの人道主義的完璧性を求めた。
  • 日本の戦争準備と映ずる様々の動きは、アメリカの「オレンジ計画(対日進攻五十年戦略)への反応として理解すべき
  • 真珠湾の前夜国務省が日本政府に送った様な覚書(ハル・ノート)を受け取ればモナコルクセンブルクでも米国に対し武器を取って立ったであろう」(A・J・ノック)
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全編のうち、以下の資料を興味を持って読み進めた。

  • 清瀬一郎弁護人 冒頭陳述
  • 徳富猪一郎 宣誓供述書「最近代に於ける日本の動向」
  • 支那重光公使発、幣原外相宛「排日及日貨ボイコットの実状」
  • 石橋湛山 宣誓供述書、付属文書「日本の工業化、侵略戦準備に非ず」
  • ローガン弁護人 最終弁論・自衛戦争論「日本は挑発挑戦され自衛に起った」
  • 米国上院外交合同委員会に於けるマッカーサー証言

この書を皮切りに、太平洋戦争、日中戦争、そして戦後日本の成り立ちと結果について考察を深めていきたい。