興奮しやすい知性が熱血漢として珍重される国(NHKアーカイブス)

福岡に住む妻の姪が最初の子供を連れて実家の群馬に帰っていて羽田から戻るので会いに行った。
国際線ターミナルの江戸情緒あふれる空間で都内に住む娘と待ち合わせて食事。ここが初めてということはここ一年海外に出ていないということになる。前回は上海万博を見に行った時で、みすぼらしい小さなターミナルだったが、こじんまりとした機能的な国際線ターミナルになっていた。
羽田からは、沸騰するアジアを中心にハワイ、ロス、サンフランシスコのアメリカ西海岸、そしてパリにも飛んでいる。京急も入っているし、随分と便利になった。滑走路が沖合に出た関係で深夜・早朝便も大丈夫になり、都内で仕事を終えてから食事をとってそれから海外に出かけることもできてビジネスや観光も活発になっている。

第一ターミナルで皆と待ち合わせ。5か月の可愛い赤ちゃんを中心に久しぶりに親戚同士の会話があった。農協幹部の義兄とはTPPについて情報と意見交換。

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帰って、ビデオに撮っていた「NHKアーカイブス」のシリーズ企画「私が選ぶあの番組」を視聴する。今回の寺島実郎さんが選んだのは『大河ドラマ花の生涯 第1回 青柳の糸」』である。
1963年に始まったNHK大河ドラマの初回の最初の映像がフルに流れた。井伊大老を描いた舟橋聖一原作のこの番組は高校一年生だった寺島さんに「歴史というものは単純ではない。何重にもチェックし立体的に考えなければわからない」と感銘を与える。

井伊大老桜田門外の変で水戸・薩摩の脱藩浪士によって殺害されるときに、最後に頭をよぎったのは、「興奮しやすい知性が熱血漢として珍重される国」というテーマだった。広く世界を見て深く考えるということは今日においても重要な基軸である。
花の生涯」が始まった1963年は、60年安保騒動の余韻が熱かった年で、そこにこの番組が登場したのも面白い。人にも、地域にも歴史がある。単純なレッテルで決めつけてはわからない。
3・11も、ヒトモノ・カネがダイナミックに動くアジアダイナミズムと向き合っていく中から、そしてアジアとの相関の中から方向を見出していかなければならない。アジアへのメッセージと構想、つまり21世紀にふさわしい日本を築いていこうとしている姿を見せるべきだ。アジアとの連携の中で東北の産業、日本の技術やエネルギーを考えていく。具体的なプロジェクトの創造が重要だ。創造的に一歩前に出よ。
花の生涯」が描いた時代に現在も近い状況。歴史の中、世界の中での自分の立ち位置を考えて判断をしていく。
次世代を育てることを自分のテーマとしていて、大学の学長をつとめたり、九段の寺島文庫を開いたりしている。磁場を形成して若い人に考えるきっかけを与えたい。
シンクタンクを率いていることもあり、日本のあり方、進路を総合的に、方向感を持ったシナリオをを提示していきたい。

この番組は中学生だった私も家族と一緒に見た記憶がある。井伊大老を演じた尾上松緑、女スパイ・村山タカを淡島千景国学者・長野主馬を演じた佐田啓二淡島千景が何かに驚いて「まだドキドキしています」と自分の胸に手を当てさせるシーンがあり、このとき父が「たぬきめ」とつぶやいたことも中学生の私は鮮明に覚えている。

NHK大河ドラマは、日本人の歴史観を形成していった。
長谷川一夫赤穂浪士、緒方拳の太閤記尾上菊之助源義経、北大路欣哉の龍馬がゆく、石坂浩二天と地と平幹二朗樅の木は残った、仲代達也の新・平家物語中村梅之助花神佐久間良子のおんな太閤記、緒方拳の峠の群像
渡辺謙独眼竜政宗、緒方直人の信長、竹中直人の秀吉、本木雅弘徳川慶喜滝沢秀明義経宮崎あおい篤姫福山雅治龍馬伝、など思い出に残るドラマが多い。
原作者で一番多いのは司馬遼太郎だ。日本人の歴史観司馬遼太郎とNHKでつくってきたと言える。