今回のTPP問題の本質と対処のあり方--寺島実郎

本日のリレー講座は、寺島学長、TPPに対する見方が聴かせた。

  • 2010年の横浜のAPECで菅首相は半知半解のまま「平成の開国」といいTPP(環太平洋パートナーシップ)への参加に言及。あの時点で交渉に参加していればまだ間に合った。
  • しかしこの一年にやりべきことをやらないまま、仕方ないから参加しようかというむムード。
  • 自分は20年前から日本から日米自由貿易協定の締結を提唱してきたが、今回の参加には疑問がある。
  • 産業と農業の戦いにしてはいけない。韓国は大統領が産業界に対し「技術と資金」で農業を支援せよと命令的に伝えている。バイオ技術、、、などで農業を支援。
  • 9カ国のうちすでに6か国とはFTAを締結済み。だからTPPの実態は日米自由貿易協定だ。
  • 今さら?というタイミング。迷惑な参加者となり、非主体的立場にならざるを得ない。今回は「参加せよ」とは言い切れないところがある。
  • 私の考え。1.基本は開国すべきだ。2.今回のTPPは準備不足。3.今更の参加は主体をとれない。したがって今回は見送るのが正しい。その上で、アメリカに対して二国間EPA(包括的経済協定)を蒸し返し提案する。
  • 日米同盟とはいうが軍事同盟に偏っており、経済面では同盟関係にはない。
  • FTA(自由貿易協定)はユダヤ人の発明。1985年のアメリカとイスラエルが最初。1990年アメリカとカナダ。1991年北米自由貿易協定。このあたりで寺島は日米自由貿易協定を提言。橋本首相に日米FTAを結ぶこと、WTO本部を日本へと提案。日米貿易摩擦に対し政府は「バイからマルチへ」といいWTOに期待した。しかしその後二国間協定が主流になってきたため出遅れてしまった。通産省はFTAという言葉を使いたくないためEPAというよううになった。アメリカはFTAは韓国で打ち止めという方針になった。したがってTPPに入るか入らないかという問題になってしまった。
  • 後手後手。せんちんづめ。引くに引けない状況、愚かなゲーム。今から参加しても主張の場もないだろうし歓迎はされないだろう。日本の外交力、政治力の弱さ。
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欧州の経済危機。いったい何に直面しているのか。アメリカ流の金融資本主義の行き詰まりだ。

  • 金融は産業金融、育てる資本主義が原点だった。1985年あたりから金融のビジネスモデルが「マネーゲーム」へと変わってきた。「額に汗して働く」から「濡れ手で粟」のビジネスモデルへ変わってきた。
  • ゴールドマンサックスのような投資会社・アドバイザーがギリシャ国債を売り赤字を増やし危機に陥れた。郵政民営化簡保の宿などを扱い物凄い手数料を取り詐欺まがいでさっさと消えて行った。オリンパスの件も600億円の手数料の一部が赤字補てんに使われ粉飾決算に。資本主義の死に至る病
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日本をどうする? 大学生の就職難問題。

  • 親の問題。1965年前後5年に誕生し70年代に少年時代、バブル時代に就職した世代。アッパーミドル幻想。メディ認知企業に価値を感じる。地場の優良企業に無関心で親子間に感覚の重大なずれがある。
  • 学生の問題。まじめに勉強している。(資格・英語・教養、、)。だが企業はポテンシャルのある人材を採りたい。TPPなどの流れもあり、競争者は非日本人に。彼らは英語・母国語・日本語、そして向上心にあふれている。物産の150人の新人のうち36人は外国人、国際体験(外国の大学など)は60人。ユニクロは1300人のうち1050人が外国人。パナソニックは1390人中1100人が外国人。
  • 社会の問題。大学卒業生のフリーターは10.7万人。時給1000円のチープジョブならある。自分を高め、深め、自信が持て、家族を持て、自己実現できるような高い質の仕事が減っている。余人をもって替えがたい仕事が減少。
  • 過保護な大学生活から厳しい社会に出ると、現実に遭遇し、3年で辞めるようになってしまう。
  • 稼ぐ仕事と貢献する仕事というマージナルな生き方を提案する時期に来ているかもしれない。
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今日は、ビジネスマン時代にもっとも影響を受け、上司として尊敬していた舟崎さんが多摩大を訪れた。研究室、授業中の教室、教員ラウンジ、図書館、そして学生食堂を巡りながらいろいろと話をする。時代、欲望、謙虚、、、。やはり舟さんの世の中に対する見方は深い。

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夕方のゼミは、TPP問題の図解化、なども。
夜は、ゼミのヴェルディ班の5人と食事。3年2名、2年3名。

学長と講義の前に、国交省の菊川道路局長と私の友人関係の話題、金沢の鈴木大拙館の話題、大学同窓会の件など。

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朝の散歩でモナちゃん。