『東北「道の駅」の震災対応の実態と新しい役割』

多摩大学 東北「道の駅」大震災研究プロジェクト 報告書『東北「道の駅」の震災対応の実態と新しい役割』が関係者のご苦労によって完成。131ページ。
来週の仙台での報告会で配布予定。

以下、私の担当の「まえがき」。

                                                                    • -

2011年3月11日に発生した東日本大震災からほぼ一年が経った。
この地震津波原発事故によって、私たちの世界観は一変した感があり、被災した東北のみならず日本全体の行方に大きく深刻な影響を与え続けている。

「道の駅」は、1993年に103駅から出発し、現在では977駅と全国展開し、車社会を生きる国民にとって欠かせない身近な存在となっている。
今回の震災にあたっては、本来の休憩機能、情報発信機能、地域連携機能を土台に、震災直後には被災者支援の拠点となっただけでなく、自衛隊・消防等の基地、物資の集積配送拠点、市場の開催場所、など、復旧・復興支援の防災的拠点としても重要な役割を演じており、評価が高まっている。

多摩大学は財団法人JKAからの資金協力を得て、救援、復旧、復興支援にあたり、東北の道の駅の果たした役割がどのようなものだったのかを明らかにし、今後果たし得る平常時と災害時の双方に適応した地域の多機能型交流拠点としての新しい役割を模索するために、一年間に亘って調査を行う機会を得た。組織的には、多摩大学地域活性化マネジメントセンターが主体となり、現地のNPO法人東北みち会議の協力を得ることができた。

そして2011年9月5日から10日まで岩手県宮城県福島県の3県に、教員・職員・学生の混成チームによる現地調査団を派遣し、道の駅と地方自治体を合わせて合計29の施設を訪ね、震災時の状況と対応の聞き取りを行った。

その過程で筆舌に尽くし難い困難に対処せざるを得なかった、現場を預かる駅長さん達のリーダーシップ、志の高さ、スタッフたちとつくりあげたチームワーク力、地域社会との固い信頼関係、そしてそれらが織りなす具体的で的確な問題解決力に強い感銘を受けたことを記さずにはおれない。

また、その後、現地調査の成果を基に139の全東北「道の駅」を対象としたアンケート調査を行い、先の現地調査と合わせて今後の道の駅のあり方についての提言をまとめたのが本報告書である。各位の参考になれば幸いに思う。

多摩大学としては、外部資金を得て教員・職員・学生の混成チームで現地調査を行うという大型プロジェクトとなったことが特筆すべき点である。
「現代の志塾」という教育理念と問題解決力の養成に向けたプロジェクト学習を標榜する教育機関として、合宿型の調査プロジェクトは教職員・学生双方にとって大きな教育効果もあったと判断している。

本プロジェクトに関係した皆様に改めて感謝申し上げたい。

 多摩大学地域活性化マネジメントセンター副センター長・現地調査団団長
久恒啓一