小中陽太郎「翔べよ源内」(平原社)--「ああ、吾、あやまてり、、」

小中陽太郎「翔べよ源内」(平原社)を毎日少しづつ時間をかけて読んだ。
平賀源内(1728年生れ)という異能の持ち主の波乱の人生と彼を取り巻く個性豊かな人々、そして江戸の田沼時代の空気がよくわかる傑作だ。

翔べよ源内

翔べよ源内

讃州高松藩の最下級の武士の家に生まれた源内は、本草学・薬草に深い関心を持つ藩主と親しくなるが、広い世界を見たいと暇をもらおうとする。藩主の答えは自由は与えるが、他に就職してはならないという「仕官御構い」の宣告を受ける。
著者の小中陽太郎は若い頃にNHKから脱藩した経歴を持っており、市民運動、執筆、などの仕事で世の中を渡る人物だが、この源内の人生に関心を寄せている。歴史の中に自らのモデルを求めるといういことだろう。
この本を読みながら、小中は源内そのものだと何度も思った。

源内という人物を表す言葉。
才気の人。諧謔の人。。千里の駒。戯作者。須原市兵衛。夢見人。起業家。天才。奇才。、、。

ネットワーカー源内を取り巻く同時代の人々。
杉田玄白前野良沢田沼意次青木昆陽。小野田直武。司馬江漢。塙保己一酒井抱一。太田蜀山人。工藤平助。滝沢馬琴田沼意次。、、、

この源内にして、最晩年の鬱屈があった。翔べなかった己を愧じた言葉である。
「ああ、吾、あやまてり。あたら小才と奇智におぼれ、お江戸の風に浮かれだこ」

                                                                • -