仙台のカメイ美術館(亀井文蔵。昭伍)。宮城県美術館で松本竣介展。

明日の講演に備えて早めに仙台に入った。

まず、五橋のカメイ美術館を訪ねる。
この美術館は蝶とこけしと絵画を専門とする美術館だ。
総合商社カメイの創業90周年を記念して設立されたカメイ社会教育振興財団の事業の一環として開館した。

亀井文蔵が60年以上にわたって収集した世界各地の蝶の標本が14000頭、地域ごとに見事に並んでいる。1924年生まれで先年亡くなった亀井文蔵は「お子さんたちが自然に親しむための第一歩となり、動植物や昆虫を守り育てる一助になれば幸いに存じます」とのメッセージを寄せている。ちょうど親子が見ているのを見かけた。そういう願いが届いているのだろう。

亀井文蔵は東北帝大工学部卒。1952年亀井商店入社。社長、会長。宮城テレビ会長。

故郷の塩釜、仙台、宮城、日本各地、アマゾン、インドネシアと採集は世界各地に及んでいる。16万頭のコレクションとなっている。
グアムのマルパネルマダラ、韓国のシャコンアゲハ、中国のルリモニアアゲハ、台湾のキシタアゲハ、ヨーロッパのアレキサンダートリバネアゲハ(メスは世界一大きい)、ソロモン諸島のトリバネチョウ、そしてその足跡はタイ、インド、フィリピン、マレーシア、インドネシア(青が美しいオオルリアゲハ)のボルネオ、スマトラ、ジャワ、セレベス、パプアニューギニア、北米、アフリカ、南米(世界一美しいモルフォチョウ。青色金属光沢は光の干渉によるもの)に及んでいるのに驚いた。
宮城大時代に文蔵さんの話を聞いたことある。改めて丹念に集め整理された膨大な標本を眺めてみて感嘆の声をあげざるを得ない。
河北新報に連載された「世界の蝶」が本になっていたので買って読んでみたが、世界各地での採集のエピソードと地元の宮城の話題も必ず毎回出ているので身近な感じもする。短い文章だが、教育的要素もあり、達文である。
太白山、塩釜、蔵王町、自宅の庭、ラバウル塩竈神社大石田、南米ペルーのリマ、一高、、、、。
「幻の新種、シジミチョウ」という項に「あるいは新種ではないかと思いを馳せながら、九州大学教授で蝶に関しては最高権威の白水隆先生に、この蝶を送った」とあるのを見かけた。白水先生は私の探検部時代の顧問の先生だった。偉い先生だったのだと改めて感じ入った。

文蔵の弟の亀井昭伍(カメイ社長)は、こけしの収集家である。東北各地のこけしの工人を訪ねる旅がこの実業家のライフワークでもあった。こち以上のコレクター歴である。

仙台の実業界のトップをつとめたこの兄弟が没頭した趣味の世界も素晴らしい。
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宮城県美術館で開催中の「松本竣介展」を観た。
1912年生まれで36歳で亡くなっている画家である。13歳の時に流行性脳脊髄炎で聴覚を失う。そのことがきっかけで油絵を描くようになり、画家になることを決意する。
この人のモンタージュ手法は、雑多なものを配置して雰囲気を出すという方法で、街などの様子を象徴的に描き出すのが見事だ。

日中戦争など軍部が台頭した時代。国策に応じて思想感情を表現せよという意向に対して反論した「生きている画家」という論考で戦後評価が高くなる。
「画家の像」という、避けようと斜めに座る妻の横顔と、怯えて隠れながら怯えた片目で対象を見ている女の子、そしてその傍にまっすぐに立っている若い画家という構図の絵が印象に残った。
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夜は、横野さん、横野さんの息子さん、粟野さん、佐藤さんという仙台知研のメンバーと富田さんを交えてすし勘で楽しく食事会。
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報道ステーション寺島実郎さんが出ていて、日米安保論を語っていた。