毎日少しづつ読み進めていた安野光雅「絵本 平家物語」を読み終わった。
- 作者: 安野光雅
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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講談社学術文庫「平家物語」(全12巻・杉本圭三郎訳注)を中心に、絵画化した場面に沿って安野が文章を書きおろしたものだ。選んだ79場面と、それを含む143の文が原点に沿って配列されている。
安野は旧跡を訪ね、昔の時間を探す。その場所に立てばなにほどかの感慨が湧きおこる。地霊が感慨や情景をもたらしてくれると言っている。「絵本」という表現手段は、物語の主要なシーンのイメージを描いてくれているので、文章と相俟って真に迫ってくる。
安野光雅は、日本の古典にとどまらず、世界に目を向けて、古典を絵本という方法で再解釈しようとしている画家である。この志やよし。
戦い、俊寛僧都の鬼界が島への島流し、巴御前、那須与一、義経の活躍と死、、、。
清盛は64歳で没。
「頼朝めは死罪にすべきだったのを、流罪にしたのがまちがいだった」
「頼朝の首を見ぬことがこころ残りだ。頼朝の首をはねてわが墓の前に供えよ」
源頼朝。53歳で没。
少しでも平家に縁をもち、謀反の種になりそうな者はことごとく処分するという、あまりに猜疑心の強い頼朝、、。
大地震が二回。物語の最初の方の治承3年(京都。1179年)の大地震と、最後の方の元暦2年(京都。1185年)の大地震。「方丈記」がその様子を記している。
「そのさまは尋常ではなかった。山は崩れその土が川をうずめ、海が傾いて陸地に浸水した。大地は裂けて水が湧き出し、大きな岩が割れて谷に転がり落ちた。波打ち際を漕ぐ船は波の上に漂い、道行く馬は足の踏み場に惑っている。いわんや、都のあたりでは至る所、お寺のお堂や塔も一つとして無事なものはない。あるものは崩れ、あるものは倒れている。塵や灰が立ち上がって、もうもうとした煙のようである。大地が揺れ動き家屋が倒れる音は雷の音とそっくりだ。家の中にいるとあっという間に押しつぶされかねない。かといって、外に走り出せば大地がわれ裂ける。羽がないので空を飛ぶこともできない。竜であったなら雲にでも乗るだろうに。これまでの恐ろしかった経験のなかでもとりわけ恐ろしいのはやはり地震だと思った。」
「その直後には誰も彼もがこの世の無常とこの世の生活の無意味さを語り、いささかの欲望や邪念の心の濁りも薄らいだように思われたが、月日が重なり、何年か過ぎた後はそんなことを言葉にする人もいなくなった。
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