百田尚樹「幸福な生活」--凄みのあるホラー短編集

百田尚樹「幸福な生活」を読了。
この作家は、毎回まったく作風の異なる作品を上梓し、売れなければすぐに小説をやめるということを公約している。
この覚悟は凄みがある。

幸福な生活

幸福な生活

この本はホラー短編で、最後の一行でそれまでの流れが一気に覆るという恐ろしい内容である。
そしてその最後の一行はすべて最後の偶数ページに書かれてある。ページを開くとどんでん返しが起こるという趣向だ。

母の記憶--「仕方ないから、いっしょに埋めちゃったのよ」
夜の訪問者--「見たな」
そっくりさん--「ひろし!」
おとなしい妻--「あなたの奥さんですよ」
残りもの--「連続婦女暴行殺人犯です」
豹変--「できちゃったの」
生命保険--「あの時のチンピラじゃない!」
痴漢--「何かの間違いで、虎の尾を踏んじまったんだろう」
ブス談義--「私の顔、好きでしょ?」
再会--「今朝、亡くなったらしいよ」
償い--「宇宙人の話って何のこと?」
ビデオレター-「それでは、ごめんあそばせ。
ママの魅力--「伝説の怪物プロレスラーがこんなところに!」
淑女協定--「出張ソープ嬢だよ」
深夜の乗客--「この手口、5年前にも引っかかったよ」
隠れた殺人--「子供のパンツじゃないか」
催眠術--「坊やの催眠術なんかにかかるわけないじゃん」
幸福な生活--「それ以来、ずっと植物状態なんですね」

一見幸福に見える生活に深い裂け目が潜んでいることにぞっとする内容だ。

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次は、本屋大賞2013を受賞した「海賊と呼ばれた男」(上下)を読み始めた。

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  • NHKEテレ「日曜美術館」は影絵作家・藤城清治那須に美術館。80代になって新境地に挑戦する姿が素晴らしい。
  • NHK「宮本信子伊丹十三」(再放送)。女優で妻の宮本信子の視点で描く伊丹家の暮らし。監督の創造の秘密に迫る。伊丹十三の最初の監督作品「お葬式」は51歳の時の作品だった。伊丹は遅咲きだった。イラストレーター、俳優などさまざまな才能があったがなかなか焦点が定まらなかった伊丹は50代になってようやく父・伊丹万作と同じ映画監督になる。それが天職だった。四国旅行で予定している松山の伊丹十三記念館宮本信子館長)の予習になった。
  • NHK「八重の桜」は、いよいよ新島襄が登場。新島は1964年に鎖国の禁をおかして函館港からアメリカへ密航。ちょうど南北戦争が終わった年(1865年)にボストンに到着。函館で出航の場所の記念碑を見たことがある。1875年に同志社英学校を設立するが、これは明治8年のことになる。明治4年に新橋横浜間の鉄道が開通、明治5年に富岡製糸場、ということをみると、明治の近代のスピードの凄まじさを感じる。