映画「永遠の0(ゼロ)」の影響

百田尚樹原作で山崎貴監督の映画「永遠の0」を観る。

「あまりにも素晴らしい小説と出会い、対抗心が生まれ」て山崎は「映画でしかできない表現をたくさん使って、原作と戦いたい」と思う。その心意気が「今までと違うタイプの戦争映画」を実現させた。山崎監督は1964年生まれで、コンピュータグラフィックによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFX(Visual Effects)といわれるビジュアル・エフェクツの第一人者。「ALWAYS 三丁目の夕日」の昭和の町並みをVFXで表現し話題になった。零戦の空戦の様子などは実際に飛んでいる感じを観客は共有できる映像となっている。

主演の岡田准一は「天地明察」での好演技を覚えているが、「図書館戦争」でも話題になった俳優だ。歴史が好きで多くの本を読んでいるし、身体能力が抜群であり、かつ演技力が高いという稀有な存在になっている。山崎監督が描いた零戦の儚さや、空母の存在感などを舞台に表情も含め、研究したという。

原作者・百田尚樹(1956年生まれ)は、この長編を2時間少々の尺にまとめるのは自分でも不可能と匙を投げていたが、脚本をみてOKを出す。この小説は百田直樹の処女作で関連本を含めて400万部を突破するベストセラーとなった。
百田は試写を5回も観ているのだが、毎回泣いたという。それほど傑作だということだろう。
「誰のために生きているのか、何のために生きているのか。宮部久蔵はそれを知っていた男なんです。」

ライターの姉と司法試験浪人の弟の二人で祖父であった零戦パイロット宮部久蔵の足跡を追う物語だが、宮部を知る男たちの演技が、宮部への憎しみと尊敬を語る中で、彼らのその後の人生の深みを感じさせて印象に残る。

原作では宮部を追う長い時間の後に、祖父の生き方と人物に影響を受けて、姉は朝日新聞記者と思しき人の求婚を断り、好きだった人と結婚を決意する。そして弟は無気力状態から脱していく。
映画ではそこは描かれてはいないが、観客も含めて生きていることは素晴らしいと感じるだろう。
小説や映画や演劇などの芸術は、生きていることの素敵さを感じさせ、人々に勇気を与える。

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さて、政府は武器輸出三原則の例外扱いで南スーダンPKO活動中の自衛隊の銃弾1万発を国連経由で韓国軍に無償譲渡することを国家安全保障会議(日本版NSC)で決定した。

  • 武器輸出三原則(1967.4.21)佐藤総理、次の3つの場合には武器輸出を認めない。 (1)共産圏諸国向けの場合。 (2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合 (3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合
  • 「武器輸出に関する政府統一見解」(1976.2.27)三木総理。(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

この二つをあわせて「武器輸出三原則等」と呼ぶ。政府は今回の措置を「例外」扱いとするとしたのだが、新聞によって表現が異なっているのが興味深かった。

産経新聞:「考慮」(緊急性を)。読売新聞:「例外」。日経新聞:「例外」。朝日新聞:「拡大」(例外の)。東京新聞:「逸脱」

産経は政府の方針を後押し、読売と日経は政府見解のまま、朝日はやや非難の色を出し、東京は「逸脱」と明確に批判している。

国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合」に該当すると考えるのが普通だろうが、「人道性と緊急性」ということから判断したというのが政府見解だ。

この映画は、協力には、「防衛省」「大臣官房広報課」「陸上自衛隊」「航空自衛隊」が入っていた。
映画「永遠の0」もそういう流れの中で、役割を果たしていくのだろうか。